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福岡伸一 『新版 動的平衡』(小学館新書)2/3

生命においては、全体は部分の総和ではない p145-6 生命は細かく分解していくと確かに部品になる。遺伝子上に設計図がある二万数千種類のミクロな部品に。その部品(タンパク質)は今ではどれも試験管内で合成することができる。 でも、それを機械のように…

福岡伸一 『新版 動的平衡』(小学館新書)1/3

人は、たとえば70歳になったとき、10歳のときよりは1年が短くなったと思わないだろうか。小学生のとき私は「6年間とは何て長いものか」と3、4年生のときも、小学校を卒業した後も感じたが、70歳になったいま、これからの6年くらいは数えるうちに…

茂木健一郎 『脳と仮想』(新潮社)2/2

脳科学にとって、「意識」の存在は確実なことではないらしい p204‐6 近代科学のもとでの世界観は、私たちの身体が存在し、脳が存在し、目の前のコップが存在し、庭の木が存在し、地球が存在し、太陽が存在し、それらが方程式で記述できる自然法則で変化して…

茂木健一郎 『脳と仮想』(新潮社)1/2

科学はクオリアを、研究対象にしたくてもできなかった p20-5 赤い色の感覚、水の冷たさの感じ、そこはかとない不安、たおやかな予感。私たちの心の中には、数量化することのできない、微妙で切実なクオリアが満ちている。私たちの経験がさまざまなクオリア…

高橋和巳 『憂鬱なる党派』(新潮文庫)2/2

この小説は、『憂鬱なる党派』という題名にふさわしく、読んでいて本当に憂鬱になる。西村という主人公と6、7人の友人たちが登場するが、彼らは全員が京都大学出身の学生運動家だった。そして、アメリカに逃避して心理学者になる青戸とマスメディアに就職…

高橋和巳 『憂鬱なる党派』(新潮文庫)1/2

1965年、著者34歳のときの作。1962年『悲の器』で登場し、63年『散華』、64年『我が心は石にあらず』、65年『邪宗門』と『憂鬱なる党派』を書いた。71年に直腸がんで亡くなるから作家として活動は10年にすぎないが、倒れるまでの創作意…

大岡昇平 『俘虜記』(新潮文庫)2/2

原爆投下の是非に関してブログ筆者はこう考える。1945年7月26日、連合国はポツダム宣言を発し、日本の無条件降伏を求めてきた。昭和天皇がどう扱われるか、つまり国体は護持されるのか、それだけを天皇と軍首脳は悩みぬいた。何度となく開かれた御前…

孫崎 享 『戦後史の正体』(創元社)2/2

p168-9 アメリカは北方領土を解決不能なように放置した 鳩山政権はソ連との国交回復に邁進しました。ここで一番重要になってくる問題が、皆さんよくご存じの北方領土問題です。そこには現在でも一般の日本人がほとんど知らない事実があります。 読者の皆さ…

孫崎 享 『戦後史の正体』(創元社)1/2

著者は外務省でイラン大使、国際情報局長などを経た後、2009年まで防衛大学校教授を務めた人。外務省時代、一貫して対米自主路線を鮮明に打ちだし、圧倒的多数派を占める対米追随派に囲まれて冷飯を食わされるときも長かったようだ。 戦後史の正体というタイ…

大岡昇平 『俘虜記』(新潮文庫)1/2

軍需工場サラリーマンにしてスタンダール研究者だった大岡昇平一等兵は昭和20年1月、36歳のときにフィリピン・ミンドロ島で米軍捕虜になった。ミンドロ島は日本軍による捕虜虐待事件「バターン死の行進」で有名なルソン島バターン地方にある。 極度の疲…

ジョン・ダワー 『アメリカ 暴力の世紀』(岩波書店)2/2

p116-7 独善的な人間は相手の心理を正確におし測ることができない。それは個人でも軍隊の官僚組織でも同じである。1961年から68年まで国防長官を務めたロバート・マクマナラは、そのあと何十年もたって、2003年、ベトナム戦争敗北の原因について初めて簡潔…

ジョン・ダワー 『アメリカ 暴力の世紀』(岩波書店)1/2

THE VIOLENT AMERICAN CENTURY というのがこの本の原題である。直訳すれば『暴力的なアメリカの世紀』。日本の読者がこの邦題を目にするとき、これではあまりにアメリカに対して侮蔑的に映ることを慮って『アメリカ 暴力の世紀』としたと、訳者が冒頭に付言…

多田富雄 『免疫の意味論』(青土社)2/2

p209-10 がん細胞は免疫系から逃走する がん細胞に対してT細胞による免疫反応開始の引き金を引くのは決して容易ではない。がんはもともと自己から発生したものである。だからがんに対する免疫反応は、それが簡単には起こることがないように、前提条件が二重…

多田富雄 『免疫の意味論』(青土社)1/2

p196-8 遺伝性風土病がサルジニア島を敵から守った イタリアの孤島サルジニアには、イタリア本土とはあきらかに容貌を異にした人たちが住んでいる。彼らは紀元前7世紀にフェニキア人に滅ぼされ、次いでカルタゴ、ローマ、ビザンチン、スペインなど次々に多…

中根千恵 『タテ社会の人間関係』(講談社現代選書)2/2

p77・100 持っている能力はみんな平等だと思っている 伝統的に日本人は「働き者」とか「なまけ者」というように、個人の努力差には注目するが、「誰でもやればできるんだ」という能力平等感が非常に根強く存在している。 社会というものは、なんらかの方法…

中根千恵 『タテ社会の人間関係』(講談社現代選書)1/2

1967年に発刊され2017年現在129刷・170万部が読まれているという自国文明論の超ロングセラー。 論理よりも感情が支配しているとされる日本人の社会。西洋、インド、中国等の社会に比べて、なぜ人々の間に契約精神が欠如し、その場しのぎの価値観が支配…

丸山真男 『「文明論の概略」を読む』下(岩波新書)3/3

第20講 主権的国民国家の形成へ p279-82 福沢の独立国家論・戦争論 維新直後、国民の精神的真空状態への「識者の対応策」としてあらわれた「キリスト教立国論」を批判するなかで、福沢は「国家の存在理由」を力説しました。そこにおいて、福沢は宗教的愛敵…

丸山真男 『「文明論の概略」を読む』下(岩波新書)2/3

第17講 諸領域における権力偏重 p121-6 日本に宗教の権威なし 福沢は古代からの神道について、<元来・・・・神仏両道なりと云ふ者あれども、神道はいまだ宗旨の体をなさず。・・・・往古にその説あるも、数百年の間、既に仏法の中に籠絡せられて本色を顕…

丸山真男 『「文明論の概略」を読む』下(岩波新書)1/3

第16講 「日本には政府ありて国民なし」 p75-80 <日本にて権力の偏重なるは、あまねく社会の中に浸潤して至らざるところなし。・・・今の学者あるいは政府の専制を怒り、あるいは人民の跋扈をとがむる者多しと雖も、細かに吟味すればこの偏重は社会の至…

ジャック・モノー 『偶然と必然』(みすず書房)3/3

第9章 王国と奈落 現代社会の遺伝的衰退の危険 p191-2 すこし昔は、比較的「先進的」な社会においてさえ、身体的に言っても、また知的な面からいっても、不適者の排除は自動的で残酷なものであった。大部分のものは思春期の年齢まで生きることができなかっ…

ジャック・モノー 『偶然と必然』(みすず書房)2/3

第6章 細胞の不変性と擾乱 p129-131 現代物理学がわれわれに教えるところによれば、絶対零度以外の環境下では、いかなる微視的存在も量子的な乱れをこうむらざるをえない。これが巨視的な系の中で蓄積すると、徐々にではあるが間違いなく構造の変化をきたす…

ジャック・モノー 『偶然と必然』(みすず書房)1/3

現代分子生物学に画期的な業績を残したジャック・モノーの古典的名著。30歳ころに読んで以来の再読。1970年の発刊と同時に大ベストセラーになり、訳者がパリ空港の本屋をのぞいたときは最前列に30冊あまりも並べられていたという。門外漢には難解なところ…

丸山真男 『現代における人間と政治』(岩波全集第9巻)

p33-7 1930-40年代のドイツ社会と第2次大戦後のアメリカ社会を比べれば、似ていたと言う人よりは違っていたと言う人のほうがはるかに多いだろう。しかし1952年、マッカーシーの赤狩りの嵐が吹き荒れ、社会全体のコンフォーミズム(体制同調の空気)に嫌気が…

丸山真男 『偽善のすすめ』(岩波全集第9巻)

p325-8 なぜ偽善をすすめるか。動物に偽善はない。神にも偽善はない。偽善こそ人間らしさの象徴ではないか。偽善にはどこか無理で不自然なところがあるが、しかしその無理がなければ、人間は坂道を下るように動物的「自然」に滑り落ちていたであろう。 日本…

アンドレ・ジイド 『ソヴェト旅行記』(新潮文庫)

この本は1936年11月に上梓された。ソ連はブルジョア国家の人民にとって希望の国なのか、それとも世界中を共産化しようとする悪の帝国なのか・・・・。敗戦後数年した僕らが子供の頃にも、それはまだ小さなアタマの一部で一応考えなければならない問題…

アンドレ・ジイド 『法王庁の抜け穴』(新潮文庫)

アンドレ・ジイドは、死後、著作がすべてローマ法王庁から禁書に指定された。『狭き門』では恋人の神への自己犠牲の心を、それは真に率直な人間精神ではありえないとし、キリスト教の偽善に抗議し続けた。1951年に没したが、20世紀全体にわたって日本でも…

トーマス・クーン 『科学革命の構造』(みすず書房)

パラダイムー変わりゆく時代の空気の下にある大きな方程式ーとはどういったものなのか。それを科学分野に限って、たとえばプトレマイオスの宇宙観がコペルニクスの宇宙観に変るという「革命」が起きたとき、その時代の学者の意識の中ではどんなことが起きて…

巴 金 『寒い夜』(岩波文庫)

舞台は日中戦争最後半、蒋介石の国民党下の重慶。半官半民の出版・印刷会社で校正係として働いている主人公・宣。並みの高等教育は受けたのだが、口数が少なく優柔不断で自分を主張できない性格のためにうだつがあがらない。父親が早く死に、しだいに不如意…

フォークナー 『八月の光』(新潮文庫)

南北戦争前後のアラバマ、ミシシッピといった南部諸州。下層の白人は、人口の上でもどんどん増えてくるたくましい黒人を、貧しくなるいっぽうの親の仇であり、エイリアンであると思っていたかもしれない。そんな、荒っぽく粗野なアメリカの原風景が、熱い八…

田中 修 『植物はすごい』(中公新書)

身近な多くの植物について、酷暑地や厳寒地でも成長できる秘密、さまざまな毒を持って身を守っていること、病気になるのを防ぐ体内機構など、中学高校生などの生物好きが読んだら熱中するに違いない内容が、易しすぎるほどの文章で丁寧に綴られている。 p13…