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カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロ 『わたしたちが孤児だったころ』(ハヤカワepi文庫)

舞台は日中15年戦争の頃の上海租界。イギリス、フランス、日本などが表地と裏地がまだら模様に捻じれあう策謀劇を繰り広げていた。 語り手「わたし」の父親はイギリス商社の上海駐在員。会社は通常の貿易業の裏側でインドのアヘンを中国に密輸入し、何百万の…

カズオ・イシグロ 『浮世の画家』(ハヤカワepi文庫)

語り手でもある主人公・小野益次は、いまは隠退しているが、1945年までは日本中で名の知らない人はいなかった大画家。物語はその小野益次が、戦争が終わってすぐ、長崎の高級住宅地にある故・杉村明の大邸宅を買い取るところから始まる。杉村明というのは、…

カズオ・イシグロ 『遠い山なみの光』(ハヤカワepi文庫)

いまやノーベル賞候補と言われているカズオ・イシグロは5歳のとき父親の仕事の都合でイギリスにわたってそのままイギリス人になってしまった人である。だから日本語の読み書きはほとんどできないらしい。その「日本語が不自由な日本人」(国籍はイギリス)が…

カズオ・イシグロ 「日の名残り」(ハヤカワepi文庫)

「従僕の眼に英雄なし」というヘーゲルの名文句があるそうだ。ただしヘーゲルは、「それは英雄が英雄でないからではなく、従僕が従僕だからだ」と言い添えているらしい。食事の世話をしたり靴を脱がせたり身の回りの雑用ばかりをやっている下男にかかると、…

カズオ・イシグロ 「わたしを離さないで」(ハヤカワepi文庫)

(公式の世界では存在しないことになっている、研究さえ禁止されている)クローン人間の悲惨な運命と、彼らを作った私たちの宿業の深さを、きわめて抑制の効いた文体の中で描いた秀作である。 時代設定は一九九○年代のイギリス。ちょうどクローン羊「ドリー…