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ハナ・アーレント

ハナ・アーレント 「暗い時代の人々」(ちくま学芸文庫)2/2

●ベルトルト・ブレヒト p354 第一次大戦が引き起こしたものは、政治的に言えば国民国家の没落であり、社会的には階級制度から大衆社会への変質であり、精神的にはニヒリズムの台頭である。長い間「知的な少数者の関心事」に過ぎなかったニヒリズムは、第一次…

ハナ・アーレント 「暗い時代の人々」(ちくま学芸文庫)1/2

●教皇ヨハネス二十三世 p100 二十世紀の只中においてこのヨハネス二十三世という人物は、彼がこれまで教えられてきた信仰の各箇条を象徴的にではなく、文字通りに受け取る決意をしていた。すなわち、打ちひしがれ、軽蔑され、無視されることを、イエスへの…

ハナ・アーレント 「責任と判断」(筑摩書房) 3

リトルロックについて考える p261 トクヴィルは一世紀も前に、権利の平等とともに、機会と条件の平等がアメリカの「法」であると語っている。平等性の原則に固有のジレンマが、社会にとってもっとも危険な挑戦になると予言していたといえる。すべてを平等に…

ハナ・アーレント 「責任と判断」(筑摩書房) 2

道徳哲学のいくつかの問題 p69 真の道徳的な問題が発生したのはナチス党員の行動によってではない。いかなる信念もなく、ただ当時の体制に<同調>しただけの人々の行動によって、問題が発生したことを見逃すべきではない。そして、これらの<普通の人々>…

ハナ・アーレント 「責任と判断」(筑摩書房) 1

プロローグ p8 かつてヨーロッパでは、緊急の際には国民生活の多様性を犠牲にしてでも「国家の統合」を維持すべきだと考えられたていた。しかし現在(一九七五年)ではすべての政府が官僚機構に転落しかかっており、こうした考え方は崩壊した。アメリカも例…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 6

p216 大陸の政党の不幸は、一階級あるいは一集団の利害を国民全体あるいは全人類の利益とさえ一致すると証明しようとしたことだった。だから「ブルジョアジーの経済的膨張は歴史の進歩そのもの」であったり、プロレタリアートを人類の指導者と呼んだりした…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 5

p183 十九世紀の実証主義的進歩信仰はすべての人間は生まれながらに同等(同権でなく)であり、現実の差異は歴史的・社会的環境によるものにすぎないことを立証しようとした。環境と教育の改変と画一化によって人間を同等にすることは可能であるとした。 同…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 4

p146 帝国主義の支配形式に必要なものは、厳しい規律と高度の訓練と絶対的信頼性を具えた個人からなる有能な参謀本部である。この人々は虚栄や個人的や心から自由であるばかりでなく、業績に自分の名前が結び付けられることを願うことさえ放棄する覚悟がな…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 3

p89 イギリスにおいては、古い名門貴族と市民階級の中間にあったジェントリーがブルジョワジーの上層部をたえず同化し貴族化させていた。その結果、イギリス階級社会のきわめて硬直的な性格にもかかわらず、この国では貴族への上昇の可能性が開けていた。こ…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 2

p51 永久的膨張という帝国主義のありようは資本主義的生産自体の運動過程そのものであり、一時的な対外政策の冒険ではないとされた。(この言説は戦後日本の「平和主義者」が暴こうとしたような嘘の塊りではない。帝国主義が征服欲という政治的理念だけから…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 1

p5 労働運動は資本主義が展開する世界政策を深く理解できない。労働運動は本質的に国内政治に利害を持ち、闘争においては一国の枠内から抜けることができないから、労働者インターナショナルには基本的な矛盾がある。同品質のものが海外に低価格で存在する…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第一巻「反ユダヤ主義 」 2

p128 自分の属する民族を裏切り、自分の出生を否認し、万人のための正義を捨てて個人的な特権を採ったという成りあがりものの後ろめたさは、十九世紀の半ば以来平均的なユダヤ人の複雑な心的傾向なるものの基底をなしていた。 誹謗される民族もしくは階級な…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第一巻「反ユダヤ主義 」 1

p46 ユダヤ人は、国家の(絶対君主国家→国民国家→帝国主義国家と政体を変えていくといった)体制にかかわりなく、無条件に信頼できる唯一の社会層だった。 政体が変遷するとき、宮廷貴族、地方貴族、教会、軍人、商人、職人、農民などの各階級は、自らの利…