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内田 樹

内田 樹 「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち」(講談社文庫)2/2

リスク社会の弱者たち p117 私たちはいまリスク社会に投じられている。そしてこの社会では、失業も、ホームレスになるのも、病気になるのも、そのような生き方を選んでしまった自分の責任である、したがってリスクヘッジ(対処・救済)も自分でしなさいとの…

内田 樹 「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち」(講談社文庫)1/2

学びからの逃走 p10 憲法には国民は「勤労の権利を有し、義務を負う」定めている。おそらくほとんどの人は、労働が「権利および義務」とされている理由について考えたことはないだろう。「仕事をするかしないか、それは私が自己決定することだ。法律でがた…

内田 樹 「日本辺境論」(新潮新書)2/2

場の空気を共有したいという、(無意識的な)「ふまじめさ」 p54 ヒトラーはポーランド侵攻前にこう宣言しました。「余はここに戦端開始の理由を宣伝家のために与えよう。それがもっともらしい議論であろうがなかろうが構わない。勝者はあとになって、語っ…

内田 樹 「日本辺境論」(新潮新書)1/2

きょろきょろする日本人 p23 日本人には、もちろん自尊心はあるけれど、その自尊心の反面に、ある種の文化的劣等感がつねにつきまとっています。それは、サイエンスや芸術作品など、個別の文化指標の評価とは無関係に、なんとなく国民全体の心理を支配して…

内田樹 「街場のアメリカ論」(文春文庫)2/2

アメリカの戦争経験 p123 アメリカは戦争はたくさんしているけれど、戦死者数は少ない国である。第二次大戦では世界中の戦死者は七千万人とされているが、アメリカの戦死者は二十九万人。対して日本の戦死者は三百万人。 戦死者では圧倒的に少ないにもかか…

内田樹 「街場のアメリカ論」(文春文庫)1/2

日本はなぜアメリカを選んだのか p10 人々は自分たちのナショナル・アイデンティティを問うとき、かならず「・・・・にとって私たちは何者なのか」という「他者の視線」を措定する。他者の視線なくして「私」はありえない。化粧をするのも洋服を着るのもパ…

内田 樹 「街場の中国論」(ミシマ社)

グーグルのない世界 p52-6 二年前、グーグルが中国から撤退した。中国は「グーグルが存在しない世界」に取り残されることを自ら決断したのだが、私は、この決断は中国の知的イノベーションにダメージを与え、中長期的に中国経済の「クラッシュ」を前倒しす…

内田 樹 「街場の大学論」(角川文庫)2/2

68年入学組と70年入学組の世代論的落差 p237-9 68年の東大入学者は、まだ学内全体としては静穏なる政治的状況を保っていた時期に、大学に入った。そして医学部で始まった学内の抗争が全学に飛び火し、ある日、駒場にも機動隊が導入され「日常的なキャンパス…

内田 樹 「街場の大学論」(角川文庫)1/2

大学統合・淘汰についてのいい加減な新聞論説 p14・21 大学の統合・淘汰について2007年に毎日新聞が以下の社説を載せていた。 「こんな時代になったのは、少子化が進んだためだけではないのだ。大学教育の『質の低下』という積年の、本質的な問題がある。(…

内田 樹 「疲れすぎて眠れぬ夜のために」(角川文庫)2/2

「フェミニズム=奪還論」の意味 P59−60 ボーヴォワールが『第二の性』で主張しているのは、平たくいってしまうと、「男の持っているものを女性も持ちたい」ということです。権力と社会的地位と高い賃金。 ぼく・内田はこれをフェミニズム的「奪還論」と呼ん…

内田 樹 「疲れすぎて眠れぬ夜のために」(角川文庫)1/2

みんな知っていることかもしれないが、内田樹は合気道の達人でもある。ウィキペディアには「(確固として保守的なバックグラウンドも併せ持つ)生活倫理と実感を大切にする、『正しい日本の(インテリ・リベラル)おじさん』」 と紹介されている。 この本は…

内田 樹 「ためらいの倫理学」3(角川文庫)

「矛盾」と書けない大学生 p265-71 三年ほど前、学生のレポートに「精心」という字を見出したときには強い衝撃を受けた。 だが、この文字はまだ「精神」という語の誤字であることが直ちにわかる程度の誤記だった。しかし去年、学生が「無純」と書いてきたと…

内田 樹 「ためらいの倫理学」2(角川文庫)

アンチ・フェミニズム宣言 p143 私は若い頃、素直な心がまだ残っていたので、上野千鶴子やジュリア・クリステヴァの本を少し読んだ。 フェミニストたちは「現代社会において、男性は権力を独占し、女性はその圧制のもとに呻吟している」と書いており、「男性…

内田 樹 「ためらいの倫理学」1(角川文庫)

古だぬきは戦争について語らない p22-4 一九九九年、朝日新聞にアメリカ人作家スーザン・ソンタグと大江健三郎の『未来に向けて』という往復書簡が載った。そのなかでスーザン・ソンタグは戦争に対する進歩派アメリカ知識人の典型的な文章を書いた。 「作家…

内田 樹 「私家版・ユダヤ文化論」(文春新書)3

反ユダヤ主義 p104-5 生来邪悪な人間や過度に利己的な人間だけが反ユダヤ主義者になるというのなら、私たちは気楽である。そんな人間なら簡単にスクリーニングできる。しかし最悪の反ユダヤ主義者はしばしばそうではなかった。むしろ信仰に篤く、博識で、不…

内田 樹 「私家版・ユダヤ文化論」(文春新書)2

十九世紀的思考法 p85-6 十九世紀の人は、あらゆる事象は因果の糸で緊密に結びついており、その糸を発見することこそが「科学的思考」だと深く思い込んでいた。だから「近代科学主義者」たちは例外なく政治過程を機械のメタファーで考えた。ある政治的「結…

内田 樹 「私家版・ユダヤ文化論」(文春新書)1

ユダヤ人とは誰のことか? p26 イエスはガリラヤのユダヤ教共同体の内部に育ち、アラム語で布教活動を行った。ガリラヤはユダヤ教にとっては辺縁にあたる地であり、のちに彼は、彼の成功に嫉妬した同業のラビに讒言され、刑死した。福音書はイエスがそのと…