吉本隆明
加藤典洋が『解説』に言っていることだが、吉本隆明の書くものは何を言っているのか分からないところがときどき出てくる。私もそう思う。 二つ三つあげてみる。まず、263ページで 「『超国家主義の論理と心理』の唯一の価値は、国家として抽出される幻想の共…
吉本隆明は1924年、船大工の家に生まれた。庶民の子として、皇国主義教育に骨まで洗脳されながら育った。しかしその庶民の子は、世界がひっくりかえったときには二十歳になっていた。自然科学が好きな少年だったが、自分が受けてきた体制教育の意味を捉えら…
詩人独特の断言口調で語られる本書には、教えられることも多かった。そのひとつに本書末尾の「起源論」がある。古事記に記された初期天皇群の和称の姓名と『魏志倭人伝』に記載された邪馬台国などの官名が一致していると指摘して、古事記編者たちが思い描け…
わたしは恥ずかしながら吉本隆明は今まで読んだことがなかった。20代、何かの雑誌で読んだことはあるかもしれないが、「分かりにくい人だ」と思った記憶があるくらいで、それも二つ三つ、新聞の論壇記事だけを読んでのこころもとない印象だったと思う。 『…