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安部公房

安部公房 「箱男」(新潮文庫)

いささかお手上げの小説だ。全部がメタファーというのはわかる。この世が生きるに値しない、主人公が世界と親しむ接点も本来はない、ということもその通りである。一枚の段ボールがその断絶の象徴として描かれている。段ボール箱以外に「この世」らしいもの…

安部公房 「鉛の卵」(新潮文庫)

今から80万年後、鉛の卵の形をしたタイムカプセルの中に80万年間冷凍保存された「古代」つまり現代の人間が、80万年後の未来人類の前に突然姿をさらすことになったという話である。 そのとき未来人類は、「市民」と「どれい族」に社会分化しており、「…

安部公房 「壁 S・カルマ氏の犯罪」(新潮文庫)

主人公カルマ(宿業)氏は自分の名前をどこかに落としてしまい、もはや誰でもなくなってしまった。その代わりに(?)カルマ氏は胸の陰圧で世界のなにもかもを、目に見えたもののすべてを吸い取る「犯罪的暴力性」を持った人になってしまう。 そのカルマ氏の…

安部公房 「砂の女」(新潮社)

p12-13 砂粒の大きさは1/8mmを中心に分布している。岩石を削る水にしても空気にしても、すべて流れは乱流を引き起こすが、その乱流の最小波長が砂漠の砂の直径にほぼ等しいと言われている。この特性によって、とくに砂だけが土の中なら選ばれて流れと直角の…