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山本義隆

山本義隆 『近代日本一五〇年』(岩波新書)3/3

第5章 戦時下の科学技術 国民健康保険の改革、食糧管理制度は戦中の国民総動員体制のなかで作られた。 その冷徹で合理的な政策は、アメリカ軍の占領政策にも引き継がれた。 p175 軍部上層部は、日中戦争から太平洋戦争にいたる時期の国民総動員体制のなか…

山本義隆 『近代日本一五〇年』(岩波新書)2/3

第3章 帝国主義と科学 初代文部大臣・森有礼はなかば以上本気で、日本語の廃止・英語の採用と 米国子女との結婚による人種改良、を考えていた。 p90-3 黒船によって象徴された西欧文明の軍事的優越性は、同時に、西欧文明の知的優位性を押しつけるものだっ…

山本義隆 『近代日本一五〇年』(岩波新書)1/3

近代科学史の名著『磁力と重力の発見』(全3巻・みすず書房)を2003年に上梓した著者が、明治以来の日本の近代史を科学技術興隆史の視点から総浚いしたもの。『磁力と重力の発見』は物理学の鍵概念である「力の遠隔作用」が、西欧においてどのように「発見」…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)7/7

ニュートンと重力 p857 「私は力の物理的な原因や所在を考察しているわけではない。それらの力は物理的にではなく数学的にだけ考えられなければならない」というニュートンの言説は同時代のライプニッツにさえ理解されなかった。弁神論者ライプニッツは「神…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)6/7

フックとニュートン――機械論からの離反 p848 十六世紀後半には、音の強さやローソクの明るさは距離の二乗に反比例することが広く知られていた。ロバート・フックはニュートンへの書簡で「惑星の運動は接線方向への直線運動と中心物体(太陽)の方向に引き寄…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)5/7

デッラ・ポルタなどの「理論的」発見 p594 磁石の問題に関して(ダイヤやニンニクが磁力を破壊するといった)古代や中世の迷信と近代科学の分水線を跨いでいるのは、さまざまな実験結果を公刊し「魔術」を平明に種明かししたデッラ・ポルタの『自然魔術』で…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)4/7

十六世紀文化革命 p453−462 鉱山開発と冶金、鋳造などの大部な技術書『ピロテクニア』を一五四○年イタリア語で出版したビリングッチョと、同分野の技術書『メタリカ』を一五五六年イタリア語とドイツ語で出版したアグリコラは、それまでの時代にはなかった…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)3/7

ニコラウス・クザーヌスの「思弁による地動説」 p312 一五世紀前半、ニコラウス・クザーヌスという枢機卿が宇宙の無限性を主張している。コペルニクスの地動説より百年も前のことである。 彼は、経験や観測事実から導かれたものではない<思弁による地動説>…

山本義隆 「磁力と重力の発見」2/7(みすず書房)

中世社会の転換 / 磁石の指向性の発見 p174 八〜十一世紀、イベリア半島やシチリアを支配下においていたイスラームはキリスト教に寛容だった。キリスト教の教会は信徒たちの指導者としての立場を保てたし、資産も保持できた。ムスリムへのキリスト教布教は…

山本義隆 「磁力と重力の発見」1/7(みすず書房)

あの山本義隆が今年七一歳になっているとは知らなかった。 物理学の鍵概念である「力の遠隔作用」が、ギリシャ以来どのように「発見」されてきたかを丁寧に説く浩瀚な書である。何であれ「発見」は、あるとき突然なされ、一直線で「真実」となるものではない…