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岸田 秀

岸田 秀 『歴史を精神分析する』(中公文庫)2/2

日本は百済の植民地だった可能性が高い。 「任那日本府」は、日本を管理するための中央政府の出先機関ではなかったか。 p167−9 いわゆる皇国史観は1945年の敗戦によって公式には廃棄された。しかし今の私たちも、日本の歴史を考える場合、日本列島には…

岸田 秀 『歴史を精神分析する』(中公文庫)1/2

官僚病――自閉的共同体の病 p16−7、22、60 大東亜戦争における日本軍の惨敗の原因は、物量の差ではない。ましてや兵士たちの戦意や勇気の不足ではなかった。大東亜戦争における日本兵ほど身を犠牲にして戦った兵士がほかにいただろうか。物量の差のた…

岸田 秀 『続 ものぐさ精神分析』(中公文庫)2/2

カネの価値を信じていることは資本家も貧乏人も同じである p273-81 価値について わたし(岸田)は本書で書いているようなことを大学の講義でもしゃべっているのだが、学生たちからときどき、「そのような考え方をしていて空しくないのか」と質問されること…

岸田 秀 『続 ものぐさ精神分析』(中公文庫)1/2

これまで、文明評論の立場からの史的唯物論批判の多くは、「史的唯物論はマルクスがそれを書いた当時の社会状況に囚われた信仰告白である」 として、マルクスの自分の立ち位置に対する無自覚を批判していた。 心理学者からの史的唯物論批判がこれまでどのく…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)8/8

<ナルチシズム論> 子供時代の全能感を、 私たちはみんな、いつまでも保持していたい p304−317 ナルチシズムは、感覚運動器官がきわめて未熟な状態で生まれてくるという、人間に特有の現象である。生まれ落ちたとき、人間の幼児は、現実を知らず、対象を認…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)7/8

<言語の起源> バラバラの私的幻想から共通要素を抽出し、 共同幻想を仕立てようとするものが言語である p235−7 人間の言語は、一つの共同体内で、あるイメージに対する一つの発声に対して一定の意味を付与するという約束ごとである。その発声とイメージの…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)6/8

<時間と空間の起源> 竜宮城を去ったのに乙姫を求め、欲望が挫折することを感じたとき 浦島は「時間」に組み込まれた p220−4 人間は本質的に(過ぎ去ってしまった時間にとらわれる)アナクロニズムの存在である。人間はいわゆる固着や退行を起こしうる存在…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)5/8

<擬人論の復権> ヒステリーや強迫神経症の症状は、 その意味を精神分析者が了解し、患者に意識的に了解させれば、消失する p199−217 少し前の時代までは、近代科学が人間の身体にまでおよんで、人間も物理化学的現象にほかならないということになっていた…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)4/8

<何のために親は子を育てるか> 「親孝行」思想には、無償では子を育てる気になれない 親の気持ちが露骨にのぞいている p188-93 たとえばネズミなどの下等哺乳類の母性愛の生理学的基盤としては、脳下垂体から分泌されるプロラクチンという物質があって、…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)3/8

精神病とは何よりもまず、彼を取り巻く人々の共同幻想に同意できない病である P62−3 精神病者は、自分の私的幻想のほとんどを共同化できなかった者である。彼は、自分の住む社会の共同幻想をいったんは外面的に受け入れるかもしれないが、それは彼自身の詩的…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)2/8

<吉田松陰と日本近代> 奇矯、過激で小児退行的な吉田松陰に いまもエピゴーネンが生まれ続けている P37−43 わたしは集団心理は個人心理と同じ方法論で解明できるとの立場に立っている。・・・・集団というもの、とくに国家という集団は、その文化、思想、…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)1/8

著者の名前は知っていたがときどき新聞に載る雑文しか知らなかった。それはそれで鋭いものだったが、なぜか本は一冊も読んだことはなかった。恥ずかしいことながらこの年になって久しぶりに昂奮して隅々まで読んだ。 歴史、性、時間と空間、言語、心理学、セ…