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東 浩紀

東 浩紀 『弱いつながり』(幻冬舎)

著者によれば「哲学とか批評とかに基本的に興味がない読者を想定した本です」ということ。その通り、「弱い絆の大切さ」が「飲み会で人生論でも聞くような気分でページをさくさくとめくれる」ように、やさしく書かれている。 p13−5 「いまあなたは、あなた…

東 浩紀 『ゲーム的リアリズムの誕生』(講談社現代新書)

「オタク」や「萌え」を理解しようとしてよく読まれた『動物化するポストモダン』の続篇である。少なくとも私は、前世紀の最後半にあらわれた「ライトノベル」を誤解していた。民放TVドラマのようなきわめて類型化された登場人物が、ごく少ない語彙と常套…

東 浩紀 「動物化するポストモダン」5/5(講談社)

p130-1 オタクたちのセクシュアリティは保守的であるといわれる。動物化の流れを念頭に置けば、一見奇異な感じを受ける彼らの性的保守性も、説明はそれほど難しくないのではないか。 動物の消えやすい欲求と、人間のしつこい欲望が異なるように、動物の性器…

東 浩紀 「動物化するポストモダン」4/5(講談社)

解離的な人間 p114 二○○○年発売の『Air』という有名なノベルゲームがある。両作とも販売上は成人向けゲームとされているものの、ゲーム本体部分にはポルノ的なイラストをほとんど含まない「秀作」である。 実質的なストーリーが展開する後半部だけでも、プ…

東 浩紀 「動物化するポストモダン」3/5(講談社)

p56 大きな物語の失調とその補填というメカニズムはもう少し広い視野の中にも見ることができる。五○年代までの世界では近代の文化的論理が有力であった。そこでは大きな物語がたえず生産され、教育されていた。その一つの現われが学生の左翼運動だったわけ…

東 浩紀 「動物化するポストモダン」2/5(講談社)

p28 ポストモダンとは、文字通り、「近代の後に来るものを意味する。しかし日本は、明治以降も(近代哲学的な意味では)十分に近代化されていない。それはいままで(近代哲学的な意味では)欠点とされてきた。 しかし世界史の段階が近代からポストモダンへ…

東 浩紀 「動物化するポストモダン」1/5(講談社)

オタクたちの擬似日本 p15 いまから三、四○年前、日米欧などの高度資本主義社会では、「文化とは何か」を決める根本的な条件が変わった。それにしたがって文化ジャンルの中の勢力地図が変貌した。 ロックミュージック、SFX映画、ポップアートが台頭し、…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 5

p212 政治思想はいままで、あまりにも理性を信じすぎてきた。実際には人間の能力には限界がある。人間は理性だけでは社会の複雑さに対応できない。だとすれば、社会の基盤は、個人の理性よりも、むしろ「群れる動物」としての人性そのものに求めたほうがい…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 4

p117 ルソーの『社会契約論』を現代の情報技術に照らして読み直すことで、わたしたちは一般意志2.0という新しい概念を手に入れた。それは具体的には、これからの政府は、市民の明示的で意識的な意志表示(選挙、公聴会、新聞の投書欄などなど)だけに頼らず…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 3

p89・9・91 以下、ルソーに唱導された一般意志を一般意志1.0と呼び、それを総情報記録社会の現実に照らして捉えなおし、アップデートして得られた概念を一般意志2.0と呼んでいく。 一般意志1.0は現実には実在しない。それは抽象的な理念に過ぎない。けれど…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 2

p74・77 政治思想には「熟議民主主義」と呼ばれる考え方がある。民主党政権がやたらと「熟議」という言葉を使いたがる背景にはこの思想がある。政治学者の田村哲樹によれば、熟議民主主義とは「集合的意志決定の正統性の源泉を、諸個人の意志にではなく熟議…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 1

p23-4 「一般意志」とは、それを自身の『社会契約論』の中で記したルソーの時代には、(個人つまり特殊意志の対概念であると今でも誤解されていることの多い)まったくの虚構、『言語起源論』における「詩人の言語」や『人間不平等起源論』における「野生の…