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永井荷風

永井荷風 『濹東綺譚』(全集第九巻・岩波書店)5/5

『すみだ川』に自分で書いているように、荷風は 「既に全く廃滅に帰せんとしている昔の名所の名残りほど、自分の情緒に対して一致調和を示すものはなく、わが目に映じたる荒廃の風景とわが心を痛むる感激の情とをまとめて、何ものかを創作せん」といつも企て…

永井荷風 『腕くらべ』(全集第六巻・岩波書店)4/5

東京新橋界隈を舞台にした荷風充実期の名作花柳小説。1918年の作。タイトル「腕くらべ」とは、旦那を自分の身の中にからめ取るための芸者同士の技くらべの意。 吉岡という色男を古株の姐さんからかすめ取った、いま売出し中の新橋芸伎・駒代は、恨み骨髄の姐…

永井荷風 『すみだ川』(全集第五巻・岩波書店)3/5

1911年作。江戸末期の情緒が色濃く残っている隅田川沿い、芸者屋、しもたやなどがたて込んだ界隈が舞台。長吉の母親は常盤津の師匠をして生計を立てている。長吉は、幼なじみのせんべい屋の娘お糸が好きでたまらない。二人は毎日、浄瑠璃、三味線、芝居小屋…

永井荷風 『冷笑』(全集第四巻・岩波書店)2/5

『あめりか物語』や『ふらんす物語』で世に出て、荷風の名が知られはじめた時期の作品。1910年、夏目漱石の口利きで東京朝日新聞に連載できたこの『冷笑』によって、新進実力作家としての地位が固まったとされている。 銀行家の小山清、小説家の吉野紅雨、狂…

永井荷風 『ふらんす物語』(全集第三巻・岩波書店)1/5

1879年生まれの荷風が20代の後半、1年ほどフランスに文字どおり遊学したときのことをつづったもの。それまで数年間アメリカの日本大使館や横浜正金銀行アメリカ支店に勤務していたのが、結局荷風は官吏や銀行員としての堅気の生活ができるはずもなく、アメリ…