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福岡伸一

福岡伸一 『福岡伸一、西田哲学を読む』(明石書房)

福岡伸一が、自身の「動的平衡」論をメインモチーフにして、池田善昭という西田幾多郎研究者と「生命とは何か」を語り合った対談本。20歳以上も年長である池田氏に敬意を表して、福岡が池田氏に西田哲学の生命論を教えてもらい、そこから動的平衡論が西田…

福岡伸一 『新版 動的平衡』(小学館新書)3/3

がん細胞とES細胞の共通点 p164・170 ES細胞は万能細胞と呼ばれている。シャーレの中で培養できる。そのES細胞は置かれたまわりの細胞と「コミュニケーション」をとりながら、何にでも――肝臓にでも腎臓にでも心臓にでも――なりうる態勢で、施術者の指示を待…

福岡伸一 『新版 動的平衡』(小学館新書)2/3

生命においては、全体は部分の総和ではない p145-6 生命は細かく分解していくと確かに部品になる。遺伝子上に設計図がある二万数千種類のミクロな部品に。その部品(タンパク質)は今ではどれも試験管内で合成することができる。 でも、それを機械のように…

福岡伸一 『新版 動的平衡』(小学館新書)1/3

人は、たとえば70歳になったとき、10歳のときよりは1年が短くなったと思わないだろうか。小学生のとき私は「6年間とは何て長いものか」と3、4年生のときも、小学校を卒業した後も感じたが、70歳になったいま、これからの6年くらいは数えるうちに…

福岡伸一 『遺伝子はダメなあなたを愛してる』(朝日新聞出版)2/2

生物とはすべてのパーツが動的な平衡状態にあるもののこと P151−2 分解不可能 蜂の巣は六角形の規則正しいパターンをしています。合理的な設計に基づいて設計されているように見えます。が、そうではありません。よく見るとどの六角形もどこかいびつで、わず…

福岡伸一 『遺伝子はダメなあなたを愛してる』(朝日新聞出版)1/2

外来コラーゲンが体内に取り入れられる確率は、砂漠に大雨を求めるようなもの P20−3 コラーゲン コラーゲンはタンパク質です。タンパク質は生存のための必須成分です。が、人間は自分に必要なたんたんぱく質をすべて自ら作り出すことができます。というか、…

福岡伸一 『せいめいのはなし』(新潮社)2/2

川上弘美さんと――細胞のコミュニケーション不調ががん発生につながる p71−3 福岡 動物の細胞が正常な組織に分化していくかどうか、その重要なカギを握っているのは発生当初のES細胞同士のコミュニケーションなんです。たとえば細胞同士のコミュニケーショ…

福岡伸一 『せいめいのはなし』(新潮社)1/2

福岡伸一と、内田 樹、川上弘美、朝吹真理子、養老孟司との対談集。相手はいずれも生命を単純な機械論や還元主義では捉えない人たちである。 生命はタンパクという部品の要素と機能が一対一で対応しているのではなく、それらの関係性や統合システムの中でし…

福岡伸一 『ルリボシカミキリの青』(文芸春秋)2/2

p151-2 『1Q84』とメンデルのえんどう豆 村上春樹の大ベストセラー小説『1Q84』には、有名な「リトル・ピープル」が出てくる。形も大きさもはっきりしない、ただ人間に悪意だけを持っているかのような不可解な存在である。「リトル・ピープル」はジョージ…

福岡伸一 『ルリボシカミキリの青』(文芸春秋)1/2

p15 邪悪なウィルスは善良な人間の遠い親戚である ウィルスはどこから来たか。最小の自己複製単位であり、構造もシンプルだ。だから一見、ウィルスは生命の出発点、生物の初源形態のように見える。それがだんだん進化して複雑化していったのだと。 否。ウィ…

福岡伸一 「動的平衡2」(木楽社)2/2

p208-12 ヒトとチンパンジーの違い ヒトとチンパンジーのゲノムを比較すると九八%以上が共通であり、ほとんど差がない。では、残りの二%の中に、ヒトとチンパンジーを分ける特別の遺伝子があるのだろうか。 おそらくそうではない。特別の遺伝子の存在など…

福岡伸一 「動的平衡2」(木楽社)1/2

遺伝はほんとうに遺伝子だけの仕業か? p51-5 遺伝現象について、最近、エピジェネティクスという考え方が出てきている。エピは「外側」、ジェネティクスは「遺伝子の」、つまり、「遺伝子の外側で起きていること」という意味だ。簡単にいえば 「遺伝子とい…

福岡伸一 「もう牛を食べても安心か」(文春新書)2/2

臓器移植という蛮行 p103 生命の連鎖は食物由来情報の絶え間ない解体とその再構成の流れによる平衡状態である、という考え方をさらに敷衍していくと、臓器移植という考え方は生物学的には非常な蛮行であることになる。なぜなら、臓器移植とは別の人間の肉体…

福岡伸一 「もう牛を食べても安心か」(文春新書)1/2

私たちはなぜ食べ続けるのか p61-9 私たちはふつう、肉体というものを、外界と隔てられた「個物としての実体」として感じている。しかし、ルドルフ・シェーンハイマーが明らかにしてからまだ75年しか経っていないが、体内のたんぱく質は本当はわずか数日…

福岡伸一 「世界は分けてもわからない」 2

p145 脳死を人の死とするロジックから敷衍すれば、受精後25、6週の脳波が現れる時期を「脳始」とし、それ以前の胚はヒトではないとして、再生医療などの名目でいくらでも利用しようとする日が来るだろう。 それは器官発生の高解像度画像を手にした私たちが…

福岡伸一 「世界は分けてもわからない」 1

p32 (六等星以下の)かそけき星の光は、理論上は三十秒以上凝視してカメラのように露光しないと見えない。しかし目はほぼ瞬時に星が見える。 光には波と粒子の二つの性質がある。波として考えればエネルギーを一定量受け取るのに三十秒以上かかるが、粒子…

福岡伸一 「生物と無生物のあいだ」

p142−3 分子のような微粒子は、液体中では拡散の法則によって、「統計学的な平均としては」濃度の濃いほうから薄いほうに徐々に広がっていく。しかし、観測のある瞬間をとってみれば、粒子のうちのいくつかは、拡散の法則からはずれて、濃度の薄いほうから濃…