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辻原 登

辻原 登 『韃靼の馬』(日経新聞社)

近世中期の一八世紀初頭、徳川家宣、家継、吉宗の頃の歴史活劇小説。2012年の春にナントカ褒章を受けた辻原氏得意の分野だ。 側用人・新井白石が牛耳る江戸幕府と、家宣の将軍襲位を祝う朝鮮通信使のあいだで、国としての格の上下をめぐる名分論が戦わされる…

辻原 登 『寂しい丘で狩りをする』(講談社)

性的暴力を受けたことのある二人の女性(仮にA子とB子とする)が主人公。二人とも、過去に暴力を受けた男から現在もつけねらわれ、命の危険もある。A子を狙う男は父・兄とも芸術院会員という階級に生まれたプロカメラマン崩れ。B子を狙うのは朝鮮引揚者…

辻原 登 「闇の奥」(文芸春秋)

伝説の小人族という、現生人類の進化上で切り離されかけたネアンデルタール系の人々を、ボルネオから雲南、チベットという闇の奥深くに探しまわる冒険譚である。辻原は、人の闇のいちばんディープなところに入っていって、そこを「新石器人の謎」ではなくエ…

辻原 登 「許されざるもの」

「許されざるもの」とは「悪人」の意ではない。和歌山・新宮で、百年前、幸徳秋水の大逆罪事件に関連し、処刑された医師がいたらしい。この小説はその彼ら一党の鎮魂の物語であり、「未熟な国家が許さなかった民の英雄たち」の意味にとるのが正しいようだ。…