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阿部謹也

[阿部謹也 『中世賤民の宇宙』(ちくま学芸文庫)2/2

p317−8 メルヘンは、「人間に内面が存在しなかった時代」に生まれた 古代、中世ゲルマンの民間伝説に由来するものが多いグリムのメルヘンは、ほとんど例外なしに個人という小宇宙から大宇宙を垣間見たものである。 メルヘンの主人公は基本的にはひとり旅を…

阿部謹也 『中世賤民の宇宙』(ちくま学芸文庫)1/2

P53 抽象的「時間」は中世にはじめて生まれた 水時計、砂時計、火時計は、水が流れ、砂がこぼれ落ち、蝋燭が燃えるという地球上の物理量の変化によって時の経過を測る。この意味で水時計や砂時計や火時計は「地球的時間」の尺度である。これに対し11世紀に発…

阿部謹也 『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)3/3

では、笛吹き男とはだれのことなのだろうか。『チンメルン伯年代記』という題名の、「ネズミ捕り男の伝説」と「ハーメルンの子供の失踪伝説」とを初めて関係づけて記載している16世紀中葉の手書き本が、本書に紹介されている。この手書き本には以下のような…

阿部謹也 『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)2/3

新しい都市経済は男性労働者だけでなく、 その妻や子供にも容赦なかった。 p137−8 12、3世紀が厳しい時代だったのは村の伝統社会に対してだけではない。賃労働するしかない都市の下層民も同じだった。日雇い労働者の妻は、亭主が昼食に帰ってきたときに持っ…

阿部謹也 『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)1/3

中世と近代が、ある時期をもってはさみで切るように分けられるものでないことは、いまは常識になっている。日本では明治維新をもって、なるほど江戸時代の近世と明治以降の近代は区分されているが、西郷でも大久保でも勝海舟でも伊藤博文でも彼らの魂の半分…

阿部謹也 『世間とは何か』(講談社現代新書)

ウィキペディアを見ると、著者阿部謹也氏には非常に多くの著作がある。専門は西洋中世史のようだ。「「世間」をキーワードに、「個人」が生まれない日本社会を批判的に研究し独自の日本人論を展開、言論界でも活躍した」とある。一橋大学学長、国立大学協会…