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チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 「アメリカにいる、きみ」(河出書房新社)

 p7
 (合衆国の父祖の地であると言う人もいる)最東部メイン州の、白人ばかりが住む小さな町で、アフリカから来たおじさんは近所の人たちから「リスが姿を消しはじめた」と言われたそうだ。近所の人たちは、おじさん達アフリカ人は野生の動物なら何でも食べてしまうと聞きかじっていたのだ。
 p75
 「アフリカ人のあたしがなんでアメリカの大学にに行くんだって? 多くのナイジェリア人たちの髪が部分的にブロンドであることは、英国植民地主義の追跡可能な結果である、とかあたしたちが部族意識を捨てるならアフリカが抱える諸問題は解決するだろうとか・・・・それはほんとなの? それを実感するために、あたしは東部の一流大学に行くのよ」
 p81
 「キリスト教信仰はわたしたちのアイデンティティの中で、もっとも植民地主義化されたものだわね」
 p84
 BBCラジオがナイジェリア北部ハウサ人の長刀の一振りで首を切られた南部イボ人の死者について、 「背景には少数民族間の緊張がある」 と、感情を交えず、早口の歯切れのいい声で述べるのを聞いた。しかし、その「少数民族間の緊張」は民族分断統治という手っ取り早い方法を取った自分たちイギリス人の植民地政策に原因するとは、ただのひとこともコメントしなかった。
 p91
 ナイジェリア北部で虐殺事件が起きたとき、イフェカおばさんはハウサ人兵士に殺された。娘のアリゼも。お腹に赤ちゃんがいたのに。彼らはアリゼのお腹を切り裂き、まず赤ちゃんの首を切ったに違いない。それが妊婦に対する彼らのやり方だったから。
 p173
 フィラデルフィア近郊の隣人たちは淡い色の髪をした細身の白人ばかりで、挨拶にやってきて、何かお手伝いすることはないかといろいろ聞いてくれた。夫のンケムは自分がアフリカ人で、頼りなさそうに見えることは気にしなかった。近所の白人たちが好きだったし、その暮らしぶりだ好きだったから。夫がよく、プラスチックと呼んだ暮らしだ。