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國分功一郎 『民主主義を直感するために』(晶文社)

 p239・256

 沖縄・辺野古周辺で行われているカヌーや漁船の抗議行動に対して、海上保安庁は激しい排除行為をしている。海上保安庁はゴムボートでカヌーに体当たりして転覆させるとかするのだが、そのゴムボートは、「ゴム」とは名ばかりでトラックのタイヤのような硬さである。価格1,000万円ほどの準軍事使用で、400馬力のエンジンを積んでいる。普通の漁船は100馬力というから、その4倍の力でカヌーに体当たりしてくるわけだ。
 ・・・しかも、海上保安庁の排除行動は、当初から堂々と、地元民立ち入り制限区域の「外側」で行われている。去年、2015年2月には、カヌーに乗って抗議していた8人を拘束した後、沖合3キロの外洋まで連れて行き、その場にカヌーとともに放置するという信じられないような事件も起きている。
 ・・・ここ辺野古には日本の民主主義の先端部分がある。かつてM・ウェーバーは国家を暴力の独占装置として定義したが、辺野古にはそのような国家の姿がむき出しの形で現われているのではないか。国政選挙、知事・県議会選挙、地元自治体選挙で何度も民意を表明しても、国家は平然とそれを無視する。そしてその無視に抗議する住民たちを、暴力で抑えつけようとする。デモ規制に派遣された大阪府警の機動隊員は住民を土人と呼んで自分たちの暴力性を認め、自分たちのオツムの程度を暴露した。
 国家は暴力の独占装置であるが、普段はその姿を現わしはしない。暴力は常に潜在的な脅威にとどまる。実際に暴力が現われるのは極限状態においてである。暴力が実際に行使されているとすれば、それはその現場が極限状態にあるからだ。その意味で辺野古は極限状態にあり、ここは日本民主主義の先端部分なのだ。
 辺野古にあって、基地建設反対運動は漁民・農民・運動家たちの烏合の集団ではない。沖縄全島にスーパーマーケットを展開する会社は経常利益の1%を反対運動に提供し、社員を「職務研修」として運動の現場に出している。大手ホテルのCEOは「島ぐるみ会議」の共同代表であり、有名な長文の意見広告を書いたのは大手ハム会社の社長である。
 基本的知性不足の安倍首相は、日本は大都市以外どこに行っても住民は家畜のようにおとなしいものであるとタカをくくっている。平成天皇の最初の沖縄訪問のときの火炎びん事件が、昭和天皇が沖縄を捨て石にしたことをすべての沖縄の人が忘れているわけではないことを証明したにもかかわらず。