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紫式部(円地文子)

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)9/9

なぜ紫式部はこのような長い長い物語を書いたのだろうか。第九巻の月報に河野多恵子が書いている。 「清少納言が『枕草子』を書いたのは、衒いの欲望のためだったという気がする。・・・・・が、紫式部が『源氏物語』をなぜ書いたかということは、内的・外的…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)8/9

巻十 浮舟は、光源氏の(世間的には)二男であり表の政治世界でも有能な薫と、親王ゆえに官位などどうでもいい当代随一のプレイボーイ匂宮の二人から想われてしまう。この浮舟に対しては、読者の好みは、男と女によっても、それぞれの社会観、人生観によって…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)7/9

巻八 宇治十帖が始まる『橋姫』の巻で、薫は自分の出生の秘密を知らされる。教えてくれたのは「弁の君」という、かつて源氏の六条の院で朱雀院の娘・女三の宮に付き添っていた老女房。柏木を女三の宮の部屋に手引きした「小侍従」の女房仲間で、しかも自分の…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)6/9

紫式部は僧というものを、「告げ口をする卑劣漢」として、遠ざけておきたい人種の内に数えている。 たとえば、光源氏と藤壺の不義は当人同士の絶対の秘密であったのを、代々の帝の加持祈祷を行い過分な禄をもらい続けてきた僧都が、こともあろうに不義の子で…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)5/9

巻七 『御法』 源氏が想いを掛けた女君の中では容貌、品性、教養、気遣いなどすべてにおいて他の人に比べるところなかった紫の上。その紫の上が『御法』の帖で亡くなる。 彼女は広大な六条の院で催されるさまざまな年中行事を差配する女主人の地位にはあった…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)4/9

巻六 『源氏物語』最大の読みどころのひとつ、『若菜』の上下巻がこの第6巻に入っている。位も官も絶頂を極めた光源氏の運命がここから大きく暗転しはじめる。 源氏の実子である(ことは源氏以外誰も知らない)冷泉帝に位を譲って上皇となった朱雀院が、溺愛…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)3/9

巻五 明石の君との間にできた姫君は、将来東宮御所に入内するために源氏と紫の上夫婦の養女となっている。実母である明石の君は文学、絵物語の方面にも才能があるので、当時の継子いじめの代表作だった『住吉物語』などを、表紙に趣向を凝らしたり挿絵を新し…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)2/9

巻三 いまや皇太后という頂点に立ち、女性の中では権勢並ぶもののない弘徽殿の女御。源氏の須磨下りは、その弘徽殿の妹・朧月夜に、あろうことか宮中で手をつけたことがたたったものだ。その都落ちを源氏は、罪を犯したことに対する罰ではなく、自ら決めた自…

円地文子訳 『源氏物語』 (新潮社)1/9

巻一 『夕顔』 p236 『夕顔』の最後のページに、紫式部自身が「この物語は本当にあったことを書いたのですよ」と読者に対して念を押す一文がある。当時の読者はその教養に応じて、この一文をあるいは真顔で、あるいは微笑しながら読んだに違いない。 「一体…