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池田清彦 「環境問題のウソ」

 この何年も、メディアとメーカーが大キャンペーンを張り続けている「地球温暖化の元凶はCO2だ」説は本当だろうか。「正義の物語」につきものプロパガンダは、そこにないだろうか。「正義」は、過去にローマカトリックや西側反共陣営が相手を非人間におとしめるスローガンだったが、今度掲げているのは一人も反対できないことを見越した「地球主義」である。資源を略奪し、商品を売りつけてきた西洋諸国が、その挙句に「人類は環境に対して罪を犯してきました」と言い出そうとは、這いつくばってきたアラブもアフリカもアジアも思いつかなかったに違いない。ここまでのならず者に祖国の石油を買い叩かれたビンラディンが悪の化身ということはありえまい。狡猾なブッシュの顔つきから正義が想像できなかったように。
 CO2の温室効果はずっと以前から分かっていたのに、その単独犯行説がこの二十年急に大音量になったのはなぜなのか。富を握る国は、試合のグラウンドに警官を入れながらいつも自分に有利なルール変更を行い、石油のピークアウトが明らかになると、次の金脈探査の資金を世界中から「合法的」に狩り集め始める。

 p26
 地球の平均気温は1940年から70年まで30年間で0.2度下降した。CO2の濃度が310ppmから325ppmまで急激に増大したにもかかわらずである。全世界の年間炭素排出量を見ると、1940年頃まではせいぜい10億トンだったものが、1970年には40億トンに増大している。これだけでも、人為的地球温暖化説はあやしいと、私ならば思ってしまう。少なくとも地球の気温には、CO2以外の要因が働いていることは確かであろう。
 p29
 地球の温度は、地球に入ってくるエネルギーと、地球から出て行くエネルギーのバランスで決まる。温室効果ガスは地球を毛皮のようにくるみ、出て行く熱をブロックする。ブロックする割合が多くなればなるほど地球は温暖化するが、問題は、地表から出て行こうとする熱の95%以上はすでに存在する温室効果ガスでブロックされて、地表方向に再放射されていることだ。
 という意味は、温室効果はあと数%で飽和に達し、温室効果ガスがどんなに増えてもそれ以上温暖化しないということだ。今から7000万年近く前の白亜紀には、CO2の濃度は現在に比べ5倍以上あったと考えられているが、平均気温は6度程度高かっただけらしい。だから、CO2がどんどん増えても、毎日、40度近くの灼熱地獄にさいなまれるなんてことはないのだ。
 p32-5
 地球に入ってくるエネルギーはほとんどが太陽からくる。だから太陽の活動が活発になると、当然地球の温度は上昇すると考えられる。問題はそれがどの程度かということだ。
 太陽の活動はおおよそ11年周期で変動する。活動期には黒点数が多くなり、非活動期には少なくなる。気象庁が1989年に発表したレポートには「地球全域の平均海面水温の長期変動は太陽黒点数の長期変化とよく対応している」と書かれ、過去120年余りの変動グラフが載っている。
 これを見ると黒点数が増加したときには水温が上がり、減少したときには水温が下がっていることがよく分かる。CO2増加が温暖化の主因とする説では説明できなかった1970年ごろの低温も、この黒点主因説でうまく説明できる。

 p36
 黒点数ではなく、上図の太陽黒点「周期」を変数として使うと、気温との相関はさらにはっきりする。太陽黒点周期は平均11年であるが、変動幅が10年から14年まであり、活動が活発になると周期が短くなり黒点の増減幅も大きくなる。
 そこで、太陽黒点周期の変動と気温変化の相関を調べてみると、これがよく一致するのである。未来の温度が主として太陽の活動で決まり、CO2はマイナーな影響しか及ぼさないのであれば、ものすごいコストをかけてCO2をほんのわずか減らすことにどんな意味があるのだろうか。
 とは言いながら、太陽黒点説がすべてではなかろう。地球表層温度の構成要因とその連関系について、現在の科学が知っているのはわずかである。地球の総熱量の圧倒的部分を占めるマントル対流などについて、わたしたちはほとんど何も知っていない。しかし、九州のセメント財閥のオーナーで何代前かの日本国首相は、国会答弁で「とにかくエコは儲かるんです」と臆面もなく言い切ったものだ。