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2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

内田 樹 『街場の現代思想』(文春文庫)

いくら英才教育しても、自分の子を「生まれつきの文化貴族」にはできない p22-33 文化資本には、「家庭」において獲得された趣味や教養やマナーと、「学校」において学習した獲得された知識、技能、感性の二種類がある。 家の書斎にあった万巻の書の読破と…

岩井克人『資本主義を語る』(ちくま学芸文庫)

金貨の価値は金鉱労働者の労働価値に等しい、 とマルクスは本当に信じていたふしがある p149-51 非常に逆説的ですが、マルクスはアダム・スミスよりもはるかに徹底した労働価値論者です。これは、当然、人と人との直接的な関係が人間の本来的な関係であると…

内田 樹 『子どもは判ってくれない』(文春文庫)2/2

幻想は「兌換できない紙幣」ではない p130-8 多くの知識人がおっしゃっている。「母性愛というのは近代の父権制の下で、女性を家庭に緊縛するために発明された幻想である」と。 話はそれほど簡単だろうか。国家は幻想であると断言する人も多いが、その人も…

内田 樹 『子どもは判ってくれない』(文春文庫)1/2

論説委員はだれに向かって書く? p10 イラク戦争のとき、朝日新聞の社説は「米軍はバグダッドを流血の都にしてはならない。フセインは国民を盾にしてはならない」と書いた。 この文章はまったく正しい。まったく正しいけれど、いったいこの文はだれに向かっ…

キャリー・マリス 『マリス博士の奇想天外な人生』(早川文庫)(福岡伸一訳)2/2

科学を騙る人々 p174-5 17世紀、真空を発見したロバート・ボイルはキリスト教徒である。ガラス容器の中にろうそくを灯し、ポンプで空気を抜くと灯が消えることを示した。ボイルによれば、ろうそくが消えたあとガラス容器の中に残されたものこそ、何もない真空…

キャリー・マリス 『マリス博士の奇想天外な人生』(福岡伸一訳)(早川文庫)1/2

キャリー・マリスは1993年のノーベル賞を受賞したアメリカ人化学者。その彼の、虚実ないまぜの「噂」に満ちた、波乱万丈の人生の自叙伝である。有名大学の教授には一度もならず、巨大製薬会社には一度もお抱えにならず、どの職場でも女性とのゴシップがたえ…

九鬼周造 『「いき」の構造』(岩波文庫)

巻末に多田道太郎の立派な解説が載っている。簡明にして要を得たもので、十数ページのこれだけを読んで、本文を読んだ気になってもまったく問題はない。 九鬼周造は京大教授だったし、墓が京都・白川疏水沿いの法然院にあるから、京都のひとだと思っていたが…

内田樹・鷲田清一 『大人のいない国』(プレジデント社)

子供が統治できる社会 鷲田 政治家が幼稚になったとか、経営者が「お詫び記者会見」に出てきたときの応対が幼稚だとか言いますよね。でも、皮肉に言えば、そんな人でも政治や経済を担うことができるというのは、ずいぶん成熟した社会だとも言えるんですよね…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)8/8

<ナルチシズム論> 子供時代の全能感を、 私たちはみんな、いつまでも保持していたい p304−317 ナルチシズムは、感覚運動器官がきわめて未熟な状態で生まれてくるという、人間に特有の現象である。生まれ落ちたとき、人間の幼児は、現実を知らず、対象を認…