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2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

絓(すが) 秀実  「1968年」1(ちくま新書)

一九六八年は私が大学生になった年だ。田舎から出てきたばかりの私には何もわからなかったが、一九六八年は、「著者まえがき」に言うように、学生を中心とした「世界的な動乱」の年であったらしい。東大をはじめとする多くの有名大学のバリケード封鎖は一九…

ペール・ラーゲルクヴィスト 「巫女」(岩波文庫)

磔刑の場に無理やり歩かされるイエスらしい男が冒頭に登場するので、キリスト「教」を扱った小説と思って読み始めたら、そうではなかった。葬儀の式次第を立派にしてきただけの教会や、地上の帝国主義と手を携える人身売買のような「布教」の実態や、高値の…

アントニオ・タブッキ 「イタリア広場」(白水社)

ガリバルディによるイタリア統一から、ムッソリーニによるファッショの支配をへて現代イタリアにいたるまでの、「社会の記憶」が寓話に似たかたちで語られる。良くも悪くもカトリックのドグマに、一五○○年も支配された前近代イタリアだが、作者はその呪われ…

上野千鶴子 「家父長制と資本制」 2/2(岩波現代文庫)

p75 家族を支配―被支配を含む再生産関係とみなして分析するむずかしさは、家族が一種のブラックボックスであり、かつ歴史貫通的に「自然」なものと見なされてきたことにある。とりわけ近代産業社会が、家族を競争社会からの避難所、私的な砦と見なすことに…

上野千鶴子 「家父長制と資本制」 1/2(岩波現代文庫)

p17-9 啓蒙主義的フェミニストにとって問題となるのは、人々の「遅れた意識」だけである。この「遅れた意識」を変えるのは啓蒙の力である。 啓蒙主義的フェミニストにとって真理はつねに単純である。「男女平等」という単純きわまりない真理を受け入れるこ…

池内 紀 「ことばの哲学」(青土社)

p130 英語でもドイツ語でも、熟語、慣用句は、ある種の文章の中で前置詞が特定の機能を発揮し、意味のほかに特定の役割を帯びてくる。つまり特定の「形態」を獲得し、おのずと語や文は「意味と意味形態の二重性」を帯びてくる。 ひとたび慣用句が特定の形態…

夏目漱石 「文学論」上(岩波文庫)

p24-27 ロンドン留学から帰国し東大講師となった後、『猫』、『坊ちゃん』、『草枕』などで文名を上げても、漱石は鬱々と暗かった。『文学論』の『序』は怒りに満ちて悲痛である。 倫敦に住み暮らしたる二年はもっとも不愉快の二年なり。余は英国紳士の間に…

夏目漱石 「硝子戸の中」(岩波文庫)

p18 「秋風の聞えぬ土地に埋めてやりぬ」 漱石の飼っていた犬・ヘクトーの墓碑だ。ヘクトーはもちろんホメロスの『イーリアス』中、アキレスと戦って無残に殺されたトロイの英雄である。犬の墓碑銘をどのようにするかは、犬を飼わない人には理解の外にある…

東 浩紀 「動物化するポストモダン」5/5(講談社)

p130-1 オタクたちのセクシュアリティは保守的であるといわれる。動物化の流れを念頭に置けば、一見奇異な感じを受ける彼らの性的保守性も、説明はそれほど難しくないのではないか。 動物の消えやすい欲求と、人間のしつこい欲望が異なるように、動物の性器…