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2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

永井荷風 『腕くらべ』(全集第六巻・岩波書店)4/5

東京新橋界隈を舞台にした荷風充実期の名作花柳小説。1918年の作。タイトル「腕くらべ」とは、旦那を自分の身の中にからめ取るための芸者同士の技くらべの意。 吉岡という色男を古株の姐さんからかすめ取った、いま売出し中の新橋芸伎・駒代は、恨み骨髄の姐…

永井荷風 『すみだ川』(全集第五巻・岩波書店)3/5

1911年作。江戸末期の情緒が色濃く残っている隅田川沿い、芸者屋、しもたやなどがたて込んだ界隈が舞台。長吉の母親は常盤津の師匠をして生計を立てている。長吉は、幼なじみのせんべい屋の娘お糸が好きでたまらない。二人は毎日、浄瑠璃、三味線、芝居小屋…

永井荷風 『冷笑』(全集第四巻・岩波書店)2/5

『あめりか物語』や『ふらんす物語』で世に出て、荷風の名が知られはじめた時期の作品。1910年、夏目漱石の口利きで東京朝日新聞に連載できたこの『冷笑』によって、新進実力作家としての地位が固まったとされている。 銀行家の小山清、小説家の吉野紅雨、狂…

永井荷風 『ふらんす物語』(全集第三巻・岩波書店)1/5

1879年生まれの荷風が20代の後半、1年ほどフランスに文字どおり遊学したときのことをつづったもの。それまで数年間アメリカの日本大使館や横浜正金銀行アメリカ支店に勤務していたのが、結局荷風は官吏や銀行員としての堅気の生活ができるはずもなく、アメリ…

リチャード・ドーキンス 『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店)2/2

自然淘汰説は結果論である。 ヒトのこれからについて自然淘汰説は何も言えない。 そのことをドーキンスはきちんと認めながら、次のようなとても興味深いことをこの本の白眉である同じ第13章で書いている。自己複製をするただのタンパク粒子―利己的な遺伝子が…

リチャード・ドーキンス 『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店)1/2

1976年に出た本書によってダーウィンの進化論は生物進化理論の標準理論として定まった、といわれている。刊行直後から世界的ベストセラーになり、あらゆる生物個体は利己的な遺伝子の乗り物であるという本書の基本テーゼはそれまでの生命観を180度転換するも…