グレアム・グリーン
自身イギリスの諜報部員だった経歴を持つグリーンの二重スパイ小説。「ヒューマン・ファクター」というタイトルがいい。 ストーリーは込み入っていて、とてもこの「感想文」で抄説できるものではないが、主人公カースルは南アフリカ駐在時代に情報収集に使っ…
p27 市民を疑うことを仕事とする探偵スコービーは、それにもかかわらず、晴雨計のほかの針が全部「暴風雨」のほうへ回ったずっと後まで「晴天」を指している、遅れがちな針のようだった。疑いは彼にとって真実の「詩」であったのだが、彼はよく女にモテる男…
p137 あの頃が最もひどい時代だった。想像すること、イメージにおいて考えることはわたしの職業だ。一日に五十度も、そして、夜半に目をさませばたちまち、幕が上がって芝居が始まる。いつも同じ芝居、故意のたわむれをしているサラ、わたしと彼女がしたの…