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2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

養老孟司 『脳と魂』(ちくま文庫)

養老孟司と(少々胡散臭い感じがする)臨済宗の僧侶で小説家でもある玄侑宗久の対談本。脳を含む身体の、部品の集合ではない生物のシステム性について、リアリティのある議論がされているが、全体をリードするのは圧倒的に養老孟司である。養老孟司の世界認…

金森 修 『ゴーレムの生命論』(平凡社新書)

<ゴーレム>というのはユダヤ教のラビが神のワザをまねて土塊から作った<ほぼ人間>のこと。日本人にはなじみのない概念だ。 神は不可知の意図と万能の技術を持つのだから、土塊(アダマ)から作っても人は「完全な」人(アダム)となることができる。だが…

金森 修 『動物に魂はあるのか』(中公新書)

ギリシア、ローマ以来、誰もが知っている著名哲学者たちが、いわゆる「(人間を含む)動物の魂」なるものについて、本気で考えてきた。この本では、それが中世、近代、現代でどのように変遷してきたのかについて、きわめて分かりやすく紹介されている。 解析…

内田 樹 『こんな日本でよかったね』(文春文庫)

校長先生の朝礼の話や来賓の祝辞が面白くない理由 p48-9 面白い話というのは、一言でいえば、ひとつの語を口にするたびに、それに続く語の「リストが豊富」であり、しかも筋道が意外な「分岐」をする話のことである。 「リストが豊富」とは、「梅の香りが」…

内田 樹 『態度が悪くてすみません』(角川新書)

p47 コミュニケーション失調症候群 神戸女学院大学の教員である私・内田の発言や行動には「ハラスメント」とみなされる類のものが少なくない(という方が多い)。にもかかわらず、私はいまのところ女子学生から告発されそうな事態に陥ったことがない。 「だ…

内田 樹 『私の身体は頭がいい』(文春文庫)

学校体育は身体の感受性を育むことができるか p195−7 (いつものように、体育会系の人に嫌われる言い方をあえてすれば、)身体能力開発の本義は、外部から到来する邪悪なものから身を守るための訓練のことである。 ライオンと出合ったときに、それを殴り殺…

藤井 聡 『<凡庸>という名の悪魔』(晶文社)

ドイツ第三帝国がその片鱗を見せ始めた時代そのままではないかと思わせる空気が、いまの日本にはある。もっともこちらの人は体躯が貧弱なので、あの圧倒的な暴力性だけは全然及ばないが・・・。 古くはあの小泉純一郎の郵政「改革」のとき。小泉が地方都市に…

養老孟司 『無思想の発見』(ちくま新書)2/2

「私は無思想」という強力な思想 p95 「俺は思想なんて持ってない」という思想は、欠点が見えにくい思想である。そもそも「思想だなどと夢にも思っていない」んだから、他人の批判を聞き入れる必要がないし、訂正する必要もない。じつになんとも手間が省け…

養老孟司 『無思想の発見』(ちくま新書)1/2

日本人の「私」は、個人ではなく「家」の構成員である p21・26・31 「個人は社会を構成する最小単位であり、その内部が私である」とされる。ところが日本の世間ではそうではない。日本語では「私」という言葉が、「個人」SELFという意味と、「公私の別…