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2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

村上春樹 河合隼雄  『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』(新潮文庫)

7年ほど前になくなった河合隼雄は、文壇や論壇やマスメディアとほとんど関係を持とうとしない村上春樹が例外的に自分をさらけ出して語り合える人だった。それは、二人ともに、自分の周りに「人とモノとコトの物語」を織り上げることでしか、いろいろな人の「…

ジュリアン・グラック  『シルトの岸辺』(岩波文庫)2/2

本国オルセンナの元老院が砦を守る主人公に命令書を送ってくるページがある。旧日本軍や自衛隊の命令書もかくのごときものであ(った)ろうと思わせて笑わせてくれる。 「貴官が独断で行った砦の防衛機能回復工事については、本国政庁としてはかかる措置につ…

ジュリアン・グラック  『シルトの岸辺』(岩波文庫)1/2

文庫で500ページを超す大作。その全ページが「意味伝達」という言葉の一義的な機能を放棄している文体で貫かれている。とはいっても、プルーストよりもわかりやすく、ジョイスなどとは比較を絶して親しみやすい。 ジュリアン・グラックはサルトルの同時代人…

小坂井敏晶 『民族という虚構』(ちくま学芸文庫)5/5

生命に「意味」はない。再生産を繰り返し、死ぬまで生き続けるだけである。 その存在をどうするかはわれわれの自由にならない。 p282 「外部」がなければ「内部」は存在しない。この単純な理屈から言っても、<純粋な社会>の建設は原理的に不可能である。…

小坂井敏晶 『民族という虚構』(ちくま学芸文庫)4/5

近代人は、合理的人間なのではなく、「合理化する人間」と考えたほうがいい p132 心理学実験を行う研究者は、被験者に必ず「嫌ならいいですよ、強制する気はありません」と断わる。しかしその実験が、(たとえば焼いたバッタが美味かどうかというような)被…

小坂井敏晶 『民族という虚構』(ちくま学芸文庫)3/5

支配の真の姿は隠され続けなければならない p108-9 社会現象や制度は、人間が生み出したものであるのに、人間から独立して自立運動する。社会現象は人間どうしの相互関係から生まれるのに、それが総合されて客観的な外力として人間に迫る。 商品・制度・宗…

小坂井敏晶 『民族という虚構』(ちくま学芸文庫)2/5

虚構が生み出され、信じられてこそ、 無根拠な世界が円滑に機能する p56-66 「民族」という言葉が使用されるときは、その集団に綿々と続くなにかが存在しているという了解がある。民族が連続性を保つための、その「なにか」とは次の三つである。 (1) 個…

小坂井敏晶 『民族という虚構』(ちくま学芸文庫)1/5

性別・身長・教養・年齢・収入・皮膚の色・・・、 人間だけが「範疇化」できるから差別が生まれる p25 「混血」という言葉があるが、太古の昔から純粋人種などは存在しなかった。純粋人種という言葉の意味がそもそも誤解されている。 家畜の品種と同じよう…