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2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ジェイン・オースティン 『高慢と偏見』 中公文庫

200年以上も前の作品において、精細な心理描写の見事な連なりがゆらぐことなく維持され、映像化が現代も相次いでいるというさすがの作品。特に地の文においての、相手が言おうとしていることを事前に読み取り、その裏をかく話し方をお互いに続ける会話の…

ヘンリー・ミラーが若いころに読んだ本 ヘンリーミラー全集 新潮社

(ヘンリー・ミラーが子供、若いころに読んだ本を順不同で挙げる. わたしがよんだのは紫色文字の本だけ。) ニーチェ『悲劇の誕生』、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』、トーマス・マン『ヴェニスに死す』『魔の山』『ブッデンブローグ家の人々』、マ…

岡本かの子 生成(しょうじょう)流転 小学館

近代文学史に新しく残るべき、四六判500ページの長編。初版刊行は2018年、まだ新しい本だ。 描かれる時代は太平洋戦争で敗戦の色が濃くなりつつあった頃。東京空襲の無残なシーンがかなり出てくるが、岡本かの子はそれ以前、1939年に没しているから、このあ…

瀬戸川猛資 『夢想の研究』 東京創元社

1999年にわずか51歳で死んでしまった、丸谷才一言うところの、話の柄がむやみに大きく気宇壮大な論文をサラサラっと楽しそうに書くミステリー評論家にして映画評論家>。瀬戸川猛資はそういう人である。本格的な活字書物は、というのは中に写真やイラストな…

グレアム・グリーン 『ヒューマン・ファクター』 ハヤカワ文庫

自身イギリスの諜報部員だった経歴を持つグリーンの二重スパイ小説。「ヒューマン・ファクター」というタイトルがいい。 ストーリーは込み入っていて、とてもこの「感想文」で抄説できるものではないが、主人公カースルは南アフリカ駐在時代に情報収集に使っ…