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2022-01-01から1年間の記事一覧

長谷川 宏 『丸山眞男をどう読むか』 講談社現代新書

非常に読みにくい。文章途中や段落が変わるときの接続語を足したり引いたりしながら何とか七割ほどは読めたが、政治思想史に詳しくない読書家が読んだら、激しい反感を買ったのではないか。 私が気に入っている福沢諭吉に関連した章があったので、そこだけ書…

村上春樹 『1Q84』 (新潮社)

12年ぶりの再読。前回読んだときはプルースト『失われた時を求めて 』をまだ読んでいなかった。だから以下のようなことは言えなかった。それは、『1Q84』は村上春樹ならではの、とても分かりやすい、端正な文体で書いた『失われた時を求めて』ではないかとい…

村上春樹 『海辺のカフカ』(新潮社)

15歳の少年が不思議な世界を自分で遍歴しながら心の成長を遂げていく物語。ギリシャ悲劇のエディプス王の物語が一番の下敷きになっている。 2002年の発行年に一度読んでいるが、20年ぶりに読んだ今回はだいぶ印象が違った。前回は全体を強いセンチメンタリズ…

宇佐美まこと 『少女たちは夜歩く』

愛媛県の松山市には、街の中心部に元領主・蒲生氏の居城が残っている。標高132メートルの土地に三層の天守を持ち、高層ビルの少ない地方都市のどこからでもこの城山を見ることができる。この城山のなかで、もしくは周辺の住宅地域で起きる怪異な出来事を十篇…

宮部みゆき 『ソロモンの偽証』(新潮文庫)

なんとトルストイ『戦争と平和』よりも長い学園内法廷ドラマ。6巻もあるが、『戦争と平和』よりも格段に読ませる。『モンテ・クリスト伯』のような勧善懲悪的予定調和のばかばかしさもない。 ある中学校でクリスマスの朝、一人の2年生の無残な校舎屋上から…

宮部みゆき 『我らが隣人の犯罪』(文春文庫)

短編集。表題作は『オール読物』推理小説新人賞受賞作。 父親以外の男性から精子を提供されて生まれた少年が物語を支えている。タウンハウスの隣家に、散歩に行けないストレスでわめきまくるチンを飼い、脱税をしまくっている夫婦がいるのだが、少年とその叔…

高村 薫 『地を這う虫』(文春文庫)

文庫版で50ページほどの小編を集めた短編集。地を這う虫とは、刑事を自分で退職しながら現在も昔とよく似た仕事をしている男のことである。 刑事とよく似た仕事とは、第1篇『愁訴の花』では警備会社の社員研修担当者、第2編『巡り逢う人びと』ではサラ金会社…

高村 薫 『太陽を曳く馬』 (新潮社)

オウムも含めて仏教の広大な宇宙観と人間論を真正面から扱った哲学小説。日本でこんな小説は一度も書かれなかったのではないか。何冊か井筒俊彦を読んでいたおかげで、下巻66頁「言語以前の、意味以前の、絶対無分節から、私たちのふだん生きている名称のあ…

恩田 陸 『夜のピクニック』(新潮文庫)

TVの連ドラ化や映画化がとてもしやすい高校生学園ドラマ。 舞台は2日間にわたる全校12クラスが参加する耐久歩行レース。1日目はクラスごとに、途中小休憩を取りながら、40キロ先の折り返し地点までを歩く。そこでたった2時間の仮眠休憩があり、翌朝は真夜中…

トルーマン・カポーティ 『冷血』(文春文庫)

1959年にアメリカ・カンザス州で、富裕な農場主一家4人が散弾銃とナイフで何の前触れもなく皆殺しされる。犯人は同じカンザスの下層階級に生まれ育ち、社会から冷遇、無視され続け、その冷たい視線を逆のエネルギーに変えて成人した二人の若者だった。 小説…

高村 薫 『レディ・ジョーカー』(新潮文庫)

グリコ森永事件がこの小説のきっかけになったらしい。 日本一の日の出ビールの社長が誘拐される。現金20億を支払うという条件で解放されるが、金を手に入れた犯人グループはそれを外部には発表せず、仲間のアジトに隠匿する。会社が支払ったことは事実なの…

高村 薫 『新リア王』(新潮社)

高村薫のリア王は、過去40年自民党代議士として君臨してきた政治的人間・福澤栄。地吹雪が道行く人の視界を全く狂わせてしまう青森の地で、絶対の権勢を誇ってきた男だ。毒蜘蛛の殺し合いのような、昨日別れたはずの女と今日再びまた違った形で寝るような…

恩田 陸 『 蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)

3年に一度開かれる浜松国際ピアノコンクールの模様を描いた音楽小説。一次予選から二次予選、三次予選、本選と続くなか、コンテスタントたちの上下する心理の動きと演奏の丁寧な描写、観客の感動の盛り上がりが上下巻にわたって綴られる。 作者のクラシック…