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2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

スティーヴン・グールド 『ダーウィン以来』(ハヤカワ文庫NF)2/3

p56−63 第3章 ダーウィンはダーウィニズムなど唱えていない ダーウィンの進化説はきわめてシンプルなものである。「生物進化は生物と環境との間の適応を増大させる方向に進む」というだけのものだ。ダーウィンは、「構造の複雑さとかいうことで定義される進…

[スティーヴン・グールド 『ダーウィン以来』(ハヤカワ文庫NF)1/3

スティーヴン・グールドはとてもまともなダーウィン主義進化論者である。訳者によれば、彼は30歳そこそこでハーヴァード大学の地質学教授になった秀才だが、彼をたんに自然科学者としてだけでなく、社会何々学など人文科学方面でも世界的に有名にしたのが、…

ウィングフィールド 『クリスマスのフロスト』(創元推理文庫)

いくつもの事件が時間差攻撃のようにほぼ同時に発生し、それを刑事が追いかけていく小説をモジュラー型警察小説と呼ぶそうだ。『クリスマスのフロスト』はその典型のような作品である。刊行の1974年、ロンドンの新聞書評でも「・・・・・巧みに配された謎、…

養老孟司  『大言論Ⅱ』(新潮文庫)2/2

石油が維持する世界秩序 P179-83 2003年のイラク戦争のとき、イラクの内政なんてアメリカには実はどうでもいいことだった。というより、もともとアメリカがどうこうするという問題ではない。とりあえず「イラクに民主主義を」と言っておけば済む、合衆国政府…

養老孟司  『大言論Ⅱ』(新潮文庫)1/2

西欧市民社会の「個人」に対応するものは日本の「家制度」である p27 「遅れた」日本には近代的自我が育たなかった、というのが私(養老)が受けてきた教育だった。しかし、例えば18−19世紀の日本は同時代のヨーロッパに少しも劣らない文明化された社会だっ…

内田樹・春日武彦 『健全なる肉体に狂気は宿る』(角川新書)2/2

プライド・こだわり・被害者意識の三点セット P134−9 春日 トンチンカンな自己主張をする人っているんですよね。うちの患者なんてもう個性の呪縛にとらわれている人ばっかり。ほかの病院からうちに回されてきたような患者さんに、「前の病院ではなんていわれ…

内田樹・春日武彦 『健全なる肉体に狂気は宿る』(角川新書)1/2

内田樹が精神科医の春日武彦氏と、角川書店で二日間カンヅメになって行った対談をまとめたもの。話の七割は何せ多弁な内田が喋り散らしている。対談本だから、新しい知見はほとんど披露されないし、春日さんは少し退屈なさったのではないか。 自分のキャリア…

コンラート・ローレンツ 『ソロモンの指輪』(ハヤカワ文庫NF)

いろいろな動物たちと自由に話ができたというノーベル賞受賞者コンラート・ローレンツの最初の著作。その後に、もう30年も前だったろうか、彼の書いた動物行動学の古典『攻撃――悪の自然史』を読んだが、その内容にひどく衝撃を受けた記憶がある。十分に若か…

養老孟司 『解剖学教室へようこそ』(ちくま文庫)

高校生向きに書かれたという解剖学の小論。しかし、独特の論理的飛躍がある養老さんの文章は――それは、あえて言えば禅坊主の公案にさえ似ているところがある。順接の接続語が逆接の意味になっていることもある。何冊か読んで養老さんのクセに慣れないと??…