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2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ラマチャンドラン  『脳のなかの幽霊、ふたたび』(角川文庫)

神経内科の症候群は「大量のサンプル分析」では発見できない p9 神経内科の分野では、ある症候群を持つ一、二名の患者を徹底的に調べる「一例研究」というアプローチ法と、多数の患者の症例を統計的に分析するアプローチ法の間に緊張関係があります。 私は…

ジョージ・オーウェル 『カタロニア賛歌』(筑摩叢書)2/2

私たちはスペイン戦争についてほとんど何も知らない。スペイン戦争とはフランコのファシスト党と民主主義をまもろうとする人民戦線の内戦である、人民戦線側にはヨーロッパ各地からの著名な知識人も加わって数年間戦ったが最終的にはフランコに屈した――、と…

ジョージ・オーウェル 『カタロニア賛歌』(筑摩叢書)1/2

1939年、ジョージ・オーウェルは「文明的使命感」に肩を怒らせてフランコ打倒人民戦線に参加した。しかし敵の敵は友であるとは限らないヨーロッパ政治戦争の実態は、生真面目な彼にとってあまりに複雑だった。この作品はその間の、カタロニア人民が弾圧され…

岩井克人 『会社はこれからどうなるのか』(平凡社)

2003年という日本経済のどん底のときに書かれた本である。現役のサラリーマン・サラリーウーマンやこれから就職しようとする学生のために、「会社とは何なのか」、「会社は誰のものか」ということが、非常に切れ味鋭く論旨明快に書かれている。 まえがきにあ…

井筒俊彦 『コーランを読む』(岩波現代文庫)2/2

イスラームの宗教性を支える「存在の夜」の恐怖 P323-5,332-4 イスラームの宗教性を底辺部分で支えている一種独特の世界感覚なるものを考えてみますと、「存在の夜」という形象が浮かんできます。『コーラン』の奥底のほうには、近代人なんかには想像もつか…

井筒俊彦 『コーランを読む』(岩波現代文庫)1/2

イスラムの聖典『コーラン』を通じて、古典を読むことにともなう「解釈」の問題性と可能性を突き詰めようとした本である。いうまでもなく、井筒俊彦は岩波文庫3巻に『コーラン』を訳出したイスラム学、宗教学の世界的泰斗である。 「日本人にとって『コーラ…

木村敏 「時間と自己」(中公新書)2/2

p123 鬱病親和的な人は、身近な共同体の範囲内では伝統的で保守的な行動様式を示す。彼らは流行の尖端を行く新奇な服を身につけないといわれるが、彼らはまた、時流に逆行してまで古風な服装を身につけることもしないだろう。彼らの自己同一性は、共同体の…

木村敏 「時間と自己」(中公新書)1/2

木村敏は、ウィキペディアによれば、中井久夫、安永浩らとともに、日本の精神病理学研究の第二世代を代表する人である。「ミュンヘン留学中に書かれた処女論文『離人症の現象学』によって木村の仕事はまずヨーロッパで注目を浴びた。その後「あいだ」を軸に…

石牟礼道子  『苦界浄土』(講談社文庫)

有名な本だから、話の大体の筋道はもちろん分かっていた。しかしいざ読み出して数十ページ進んだところで、極めて不適切な言葉ではあるが、「これは半素人の怨み節文学か?」と小さく口に出してしまった。熊本弁の会話体はとてもいいのだが、事件がここに至…