2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧
pu p187 夢と覚醒について プルースト(1871~1922年)はフロイトと同時代の人なのだが、フロイトの『夢判断』(1900年)は読んでいなかったらしく、眠りと覚醒を精神錯乱と復活ととらえていた。当時はそれがまだ一般的には「進んだ認識」だった。プルース…
全14巻の4冊目!前途ははるかに遠い!訳者・吉川一義氏は刊行前の約束どおり、半年に一冊必ず出してくる。頭がたれる力業である。ノルマンディー海岸でのリゾート生活を描いたこの巻は本文だけで650ページを超える大冊だが、主人公の「私」の意識の流れ方に…
翻訳者・吉川一義氏によれば、岩波文庫版全十四巻のうち読者がもっとも苦労するのが第三巻に当たる本巻らしい。スワンとオデットの娘であるジルベルトへの「私」の恋心と自意識が全巻を覆いつくしていて、その全長何千メートルもある蛇のような自意識の流れ…
昔、新潮社・井上究一郎訳の8巻本を買って読み始めたわたしもそうだったが、『失われた時を求めて』を読もうとする人は最初の10ページほどで挫折する。岩波文庫の今回の新訳でいうと、有名な「ながいこと私は早めに寝むことにしていた」という書き出しか…
p404-14 この巻においてスワンの中でオデットが決定的に変貌し、穏やかな情愛で愛される女性になる。もちろん数十ページ前からその準備は巧みに描かれているのだし、次の篇でスワンがオデットと結婚するのだから、この変貌は予想されていたのだが・・・。…
スラスラ読んでいくうちに読者をいつの間にか謎の井戸の中に引き込んでしまう、平明さと不可解なメタファーが同居する村上春樹独特の文体。彼はそれをどうやって自分のものにしたのか。 40年近く小説を書いてきた職業人としての身上書であるこの本には、その…