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2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ポール・ヴェーヌ 「“私たちの世界”がキリスト教になったとき」(岩波書店) 4

p164 西洋は他の諸文明がなした以上に人道主義、温和さを涵養あるいは奨励したとみなされている。しかしキリストの掟は、封建時代においては、近代人には不可解な暴力への思考と何の困難もなしに結びついていた。ムハンマドの教えも温和を基調としているが…

ポール・ヴェーヌ 「“私たちの世界”がキリスト教になったとき」 (岩波書店) 3

p126 コンスタンティヌスの没後二、三世紀して、ローマ帝国住民の十パーセントだった宗教が万民の慣習宗教になったのは、異教徒迫害によるものでも布教によるものでもない。「公認の宗教権威」 という万人の心を平安に導くものへの順応主義――「みんなと同じ…

ポール・ヴェーヌ 「“私たちの世界”がキリスト教になったとき」(岩波書店) 2

p32‐3 宗教性を、恐怖とか謎とか慰安など心理的な説明に還元してしまうのは、あまりに近視眼的である。宗教は無自覚的な心的狡知などではない。わたしたちは知らず知らずさまざまな慰めの信仰を自分のためにでっち上げるわけではない。 p34 初期キリスト教…

ポール・ヴェーヌ 「“私たちの世界”がキリスト教になったとき」 (岩波書店) 1

四世紀前半、キリスト教の爆発的拡大をみちびいたコンスタンティヌスという皇帝はどんな男であったのか。政治的狡知に長けていた彼は、当時圧倒的だった異教のカウンターバランスとするためにキリスト教を公認したのか。それとも、帝位にある超越者にとって…

E.M.フォースター 「ハワーズ・エンド」吉田健一訳(みすず書房)

p32 マント夫人はすぐに虚脱状態から回復した。彼女は過去に起こったことを歪める能力が非常に発達していた。だから、自分の粗忽が今度の事件で演じた役割のことも、きわめて短い期間に、すっかり忘れてしまえるのだった。 p81 マーガレットは、人生で起こ…

オルハン・パムク 「イスタンブール」(藤原書店)

p25 オスマン帝国の夕陽はすでに沈んでいたが、イスタンブールの大家族の食事どきの語らいや笑いは、幸福とは家族や大勢と分かち合う信頼、気楽さであるという間違った印象を幼いわたしに与えた。しかし一緒に笑い合い、楽しんで長い食事をともにした親類が…

夏目漱石 「文学評論」(岩波文庫)下巻 2

p153 哲学問題を詩にしようとしたアレキサンダー・ポープの遣り口は、生で食うべき蜜柑をゆで、味噌をつけて食わせるようなもので、まずいと言えば「他のものが遣ればなおまずかろう、オレだからまだこのくらいに料理が出来たんだ」と威張っているようなも…

夏目漱石 「文学評論」(岩波文庫)下巻 1

p20 徳川時代の滑稽物を諷刺と解釈する人もいるが、私にはそうは思えない。真昼間に提灯をつけて歩くのは、世の中の暗黒な所を諷した皮肉と取れば取れないこともあるまいが、一方から言えば、鬘をつけて花見をするのと同じ気楽さとも言える。花見の趣向など…