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2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

獅子文六 『断髪女中』 ちくま文庫

短編集。目立ったものはないが、ひどいものもない。それにしても読んだそばから、どんな話だったか忘れて、読み終わって数日しかたっていないのに何にも覚えていない僕のアタマはどうなっているのか。 学生のとき小林秀雄のようなものばかり読んできたから、…

獅子文六 『悦ちゃん』 ちくま文庫

なかなかの名品。作者らしくストーリーはどこまでもシンプル。1時間に70頁は読める。それでいて読者を飽きさせず、むりなくハッピーエンドに持ち込んでいく。以下は解説の一部をそのまま引く。 「主人公悦ちゃんと碌さんを取り巻く人々が魅力的だ。碌さん…

高村 薫 『神の火』  新潮文庫

若狭湾の原発に対して「北」からのテロ攻撃が計画されているという話。 かつて原発技術者だった主人公・島田が、CIA、北朝鮮、KGBそして我が国の原子力規制機構などの激しい諜報戦に巻き込まれる。 話の基本は面白いのだが、上巻を読んだ限りではメインスト…

獅子文六 『金色青春譜』 ちくま文庫

獅子文六の初期小説集。『金色青春譜』と『浮世酒場』、『楽天公子』が入っている。獅子文六が新聞小説家として独り立ちする契機となった3作である。 『金色青春譜』は尾崎紅葉の『金色夜叉』、『浮世酒場』は式亭三馬の『浮世風呂』などの戯作が下敷きにな…

江藤淳 『夏目漱石』 新潮社

江藤淳の代表作。在学中に一度読んでいる。近代日本文学史上の漱石に位置づけについて、有名な「則天去私」を中心に、彼の低音部が詳細に記されている。 『門』、『行人』、『こころ』、『道草』、『明暗』といった作品論が並べられた第二部でも則天去私への…

獅子文六 『ロボッチイヌ』 ちくま文庫

短編集。全体の表題作「ロボッチイヌ」は出色の出来。ロボッチイヌとは成熟した女性のあらゆる体徴をそっくりそのままに備えた人工売女。本物女性の体温、皮膚の湿り気、柔軟性、香気までを備えている。貞女型、娼婦型、乙女型、年増型、オバサマ型があり、…