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2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「軽蔑」と「白い巨塔」

一年ほど前、たまたま同じ日のTVで、フランスと日本の「古典映画」を二つ見た。ジャン=リュック・ゴダール「軽蔑」と山本薩夫「白い巨塔」。二作ともほぼ同年、わたしが高校生だったころ、50年前に制作されたものだ。 「軽蔑」の絵画的な画面構成の美しさ…

菅野昭正 「明日への回想」

ポール・ヴァレリーやヴィリエ・ド・リラダン、レーモン・クノーなどの翻訳で知られる著者の、子供時代から敗戦後の大学卒業までの回想記。よく抑制された文章のなかで、周囲を拾いながら、自分を確認しながら対象に丁寧に迫っていこうとする穏やかな知識人…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 7

p214 (アイヒマンに絞首刑を宣告するアーレントの、煮えたぎる怒りを冷静に抑え込んだ「判決文」) あなたは、最終的解決におけるあなたの役割はたまたまにすぎず、どんな人間でもあなたの代わりにやれた、潜在的にはほとんどすべてのドイツ人が同罪である…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 6

p173 アイヒマンの公判には、強制収容所の過酷な状況を証言する証人が八十二人いた。これらのほとんどは個々の事実については具体的証明のできない「全般状況証人」だった。うち五十三人はアイヒマンがなんの権限も持たなかったポーランドとリトアニアから…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 5

p121 古代ローマ以来、ヨーロッパ史を通して、ユダヤ人は悲惨においても栄光においてもヨーロッパ国民共同体に属していた。過去五世紀は栄光の機会もきわめて多く、ユダヤ人なきヨーロッパは西欧や中欧では想像が難しかった。 ヨーロッパ諸国民の形成と国民…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 4

p84 ナチは、絶滅収容所の殺害者部隊に、自分の行為に快感を覚えるような人間が選ばれないよう、周到な方法をとった。その絶滅収容所の指揮官には、ナチ最上層の人間が、学位を持つSSエリートたちを直接選抜した。彼ら指揮官の頭にあるのは(ヨーロッパ大…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 3

p55 「客観性」に対するドイツ人のかたくなな性癖は有名である。アイヒマンのドイツ人弁護人セルヴァティウス博士はイェルサレム裁判の口頭弁論の中で 「問題は殺すということであり、生命に関することなのだから、政治的な事柄ではなく医学上の問題なので…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 2

p32 勉強が苦手でほとんど本を読まず父親を嘆かせていたアイヒマンは、シオニズム運動のさきがけとなったヘルツルの『ユダヤ人国家』を読んでたちまちで心酔し、自分が「理想主義者」であることを発見してしまった。理想主義者とはアイヒマンによれば、自分…

ハナ・アーレント 「イェルサレムのアイヒマン」 1

p4 (第二次大戦直後時点での)イスラエル家族法制では、国内でのユダヤ人と非ユダヤ人の結婚は認めていない。外国で行われた結婚は認められるが、生まれた子供は私生児とされる。国内での、結婚していないユダヤ人同士の子供は嫡出とされる。非ユダヤ人を…