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2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

TVから 「性染色体の衰弱とシーシェパード」

男性の性決定染色体であるY染色体が北欧で徐々に不活発になっているという番組があった。オランダだったか、北ヨーロッパの局の制作だった。様々な化学合成物質の「環境ホルモン」作用ということだが、Y染色体がなくなるかもしれないのが五百万年後と聞い…

平野啓一郎 「かたちだけの愛」

こういうものをもう一度書くと、誰も相手にしなくなるという二級品である。 思えば前作 『ドーン』から、平野は作家として深刻なエンジントラブルを抱え、危険な低空飛行が始まっていた。 左足切断という、女優としての存在理由を失うような事故に遭い、それ…

平野啓一郎 「ドーン」

p60 正しいことを誰かが語っていると感じたときには、決して言葉だけを記憶してはならない。その人間の顔を声とを必ず一緒に記憶するのだ。その言葉がどんな顔とどんな声とで語られたのかを。 p171 俺は、自分はもっと複雑な人間のはずだと、おめでたくも…

平野啓一郎 「葬送」 2

『葬送』はショパンの葬式から始まっている。ということは、スリリングなプロット展開や登場人物の「生活者としての生き死に」などは初めから問題とはされていないということだ。 生死は時計で測られる時間の中の現象でしかなく、時間が短くも長くもなるとこ…

平野啓一郎 「葬送」 1

十九世紀中庸、パリでのショパン、ドラクロア、ジョルジュ=サンドを中心にした生身の「芸術家」たちの心理小説、芸術論小説。文庫四巻本の大作。平野の語彙の膨大さ、展開力の確かさ、性格描写の丁寧さとともに資料渉猟のエネルギーに改めて目を見開かされた。…

高野陽太郎 「集団主義という錯覚」

新聞などに見られる安易で自虐的な「日本人=集団主義」論を排する全体論調は、やや冗漫にせよ説得性があるのだが、一箇所「日本語には私的自己が確立されていることを表わす『自分』なる語がある」という、関西人にとっては馬鹿な!と直感する事実誤認があ…

平野啓一郎 「一月物語」

平野が好きな森鴎外をまねて、若いときに一度は書いておきたかったであろうことが匂う。デビュー作「日蝕」のスケールをやや小さくして、話を熊野古道の幻奇譚にとどめ、その代わりに細部まで書き込んだ習作だ。 ここから「決壊」まではずいぶん遠いが、平野…

養老孟司 「唯脳論」 2

p168 日本人にとって漢字は視覚にパッと訴えて理解させる言葉であり、カナは音声で以て順々に聴覚に訴えて理解させる言葉である。すなわち日本人は、漢字と仮名の皮質での処理部位が異なっているのだろう。たとえば、「角回」すなわち視覚言語に関わる中枢…

養老孟司 「唯脳論」 1

ペーパーバックを書きすぎとも言われる養老孟司氏の主著。脳の『機能』が、神経系構成物質の三次元の『構造』そのものであり、それ以上でも以下でもないことを明快に説く。 ある物質がある構造をとれば、その物質はその構造に見合った機能を 「持たざるを得…