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2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

三木成夫 『胎児の世界』(中公新書)

個体発生は系統発生をくりかえすという。人間の胎児にあっては受胎の日から30日を過ぎてからの一週間がこの「系統発生再現」の時期らしい。たった一週間で、あの一億年を費やした脊椎動物の歴史が早送りされる。その模様が息を呑むようなリアリズムで述べら…

宮本常一 『庶民の発見』(講談社学術文庫)

宮本常一は50巻を超える著作集をあの未来社から出している、批判をするのもはばかられる大民俗学者である。しかし私はどうも好きになれない。何に肌が合わないのだろうか。 本書p21に、庶民あるいは農民を擁護する宮本の基本的立脚点を記した文章がある…

余 華(ユイ・ホア) 『死者たちの七日間』(河出書房新社)

中国では、大昔からずっと、孔子が巫祝社会の中に育った時代からずっと、死者は自分の墓がない限り永久に冥界をさまよい続けなければならないとされているそうだ。古代人の恐怖が今でも生きているわけである。日本の八百神も朝鮮の北方アジア系シャーマニズ…

丸山真男 『佐久間象山・幕末における視座の変革』(岩波・著作集第九巻)3/3

「私は、人間の進歩という陳腐な観念を固守するものであることをよろこんで自認する」 本巻(岩波・著作集第九巻)に『日本の近代化と土着』という小論がある。そこで丸山は強い言葉を使って、自分がヨーロッパ近代主義者といわれていることを認めている。「…

丸山真男 『佐久間象山・幕末における視座の変革』(岩波・著作集第九巻)2/3

ヨーロッパ近代文明ははたして今も通用する「普遍的」価値をもつのか はたして丸山真男は、彼の批判者の常用文句である「心底からのヨーロッパ近代主義者」であったのか。次の一節で、佐久間象山に「中国は五千年も昔に、不思議に早く智慧はついたが、その後…

丸山真男 『佐久間象山・幕末における視座の変革』(岩波・著作集第九巻)1/3

政治が「可能性の技術」であることをよく知っていた佐久間象山 p237−8 佐久間象山は自分が仕える松代の真田藩主に対していろいろな上書を提出し、幕末の政治的な状況に対するリアルな認識方法を具申しています。その中で彼は言っています。「日本に対してイ…

横手慎二 『スターリン』(中公新書)2/2

日本とスターリンが直接関係する出来事に1939年のノモンハンの戦いがある。スターリン個人の倫理観に帰せられる人民抑圧はヒトラーのホロコーストと同様にいかなる意味でも正当化できない。が、あえて倫理と政治を切り離して考えてみれば、ノモンハン事件を…