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2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ハナ・アーレント 「暗い時代の人々」(ちくま学芸文庫)2/2

●ベルトルト・ブレヒト p354 第一次大戦が引き起こしたものは、政治的に言えば国民国家の没落であり、社会的には階級制度から大衆社会への変質であり、精神的にはニヒリズムの台頭である。長い間「知的な少数者の関心事」に過ぎなかったニヒリズムは、第一次…

ハナ・アーレント 「暗い時代の人々」(ちくま学芸文庫)1/2

●教皇ヨハネス二十三世 p100 二十世紀の只中においてこのヨハネス二十三世という人物は、彼がこれまで教えられてきた信仰の各箇条を象徴的にではなく、文字通りに受け取る決意をしていた。すなわち、打ちひしがれ、軽蔑され、無視されることを、イエスへの…

加藤典洋 「日本の無思想」(平凡社新書)2/2

p63−75 太平洋戦争の無条件降伏の際、いちばん問題になったのは、ポツダム宣言受諾が国体の護持につながるかどうかということでした。「国体護持」の大本は天皇主権の保持でしたから、天皇主権が否定された以上、結果として国体は護持されませんでした。し…

加藤典洋 「日本の無思想」(平凡社新書)1/2

タテマエとホンネという言葉が、ここ半世紀のとても新しいものであることはこの本で初めて知った。(対概念をあらわすものとしては久野収『日本の超国家主義』1956年に初出らしい。)だから戦前には、大臣が「微妙な問題に触れてついホンネをもらして」前言…

半藤一利 「日本型リーダーはなぜ失敗するのか」(文春新書)

p43 戦争であれビジネスであれ 「戦いのキーマンは参謀である」 という日本型リーダーシップの発祥は明治初年の西南戦争にあります。少なくとも、「リーダーは誰なのか」ということが問われる近代の国民国家になって以降では、西南戦争での指揮系統のあり方…

オリヴァー・サックス 「妻を帽子とまちがえた男」(早川書房)3/3

プルースト的なるもの p269-72 人間には「内なる旋律」や「内なる場面」がある。つまり心と記憶に「プルースト的なもの」がある。てんかん患者には発作時に追想が起きやすい人がいるが、その患者の大脳皮質の特定場所を刺激すると、たちどころにそういう「…

オリヴァー・サックス 「妻を帽子とまちがえた男」(早川書房)2/3

誠実 p159-60 失語症患者は、まったく単語を理解できなくても相手が言っていることがわかることが頻繁にある。それは、自然な発話とは単語のみで成り立っているのではないからである。話そうとする内容のみで成り立っているのではないからである。発話は口…

オリヴァー・サックス 「妻を帽子とまちがえた男」(早川書房)1/3

失認症 p39-42 失認症患者Pがいる。彼は妻の顔の特徴を言うとき、タテ・ヨコ・奥行き・凹凸の深さなど、帽子の特徴を述べるように言う。彼に近親者の写真を見せるとなにか抽象的な判じ物かテストをやらされているときのような態度を見せる。妻の顔写真を見…

内田 樹 「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち」(講談社文庫)2/2

リスク社会の弱者たち p117 私たちはいまリスク社会に投じられている。そしてこの社会では、失業も、ホームレスになるのも、病気になるのも、そのような生き方を選んでしまった自分の責任である、したがってリスクヘッジ(対処・救済)も自分でしなさいとの…