2014-12-01から1ヶ月間の記事一覧
社会の近代化または資本主義の高度化にともなって、その社会の個人の心理や行動はどう変化せざるを得ないか―――。このことに対して、簡単な図式を使いながらもハッとするような明解な論証を試みた論文だ。読み始める前は、こんな十把ひとからげ的な、類型的な…
河合隼雄は村上春樹との対談(『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』・新潮文庫)のなかで、村上が 「国際紛争と日本のかかわりをどう考え行けばいいのか、ぼくはまったくうまく説明できないのですよ」と嘆いていたとき、こんなふうに答えていた。 「日本は、…
精神分析あるいは臨床心理学の一般向け「古典」。1971年の初版以来、2012年で61刷を重ねている。コンプレックスという言葉は、あるいはこの新書から日本語に定着したのではなかったか。しかも、無意識内に存在し、表層意識の自我の形成に深い影響を与える「…
国家も新聞も「約束事」の言葉の上に成り立つ 2008年から2010年まで季刊誌『考える人』に連載されたものをまとめたもので、『大言論』というおふざけタイトルの付いたシリーズの最終巻。養老さんは初出の最終稿を書いていたとき72歳になっていた。いろいろな…
花田清輝は20世紀日本最大の批評家のひとりだと思う。花田はその途方もない知力によって、小児病的文壇人、厚顔無恥なデマゴーグ、蛸壺にひそむ「専門家」群を笑いとばした。そうした不羈の精神を臆するところなく公言したものにギリシアの喜劇作家アリスト…
コペルニクスを語った『天体図』で、花田清輝はヨーロッパのルネサンス人について書きながらじつは「転形期の日本人」のありかた、つまり自分のこれからの闘い方を問うている。 花田清輝は男らしい人だった。ぐずぐずと小理屈をひねくり回し、自分の勉強の足…
『復興期の精神』は鍛え抜かれた鋼鉄のような批評家花田清輝の代表作である。昭和21年の飢えと混乱の中に現われたのだが、そのときの花田は毎日が食うや食わずの状態だったようだ。もっとも貧乏は戦時中から続いていて、憲兵隊の検閲下で出版社が恐怖したこ…
第27章 カール・マルクス マルクスは、「産業社会時代の哲学」という自分の立ち位置を自覚していただろうか マルクスはみずからを唯物論者だと称したが、18世紀的タイプの唯物論者ではなかった。彼の見解によれば、ひとの感覚や知覚の作用は主体と客体の相互…
副題にあるとおり、「古代より現代にいたる政治的・社会的諸条件との関連における哲学史」を概説したものである。とりあげたすべての西洋哲学者において、その学説が微に入り細にわたって検討されているのではなく、どのような時代背景の中にその学説が生ま…