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2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

阿部謹也 『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)3/3

では、笛吹き男とはだれのことなのだろうか。『チンメルン伯年代記』という題名の、「ネズミ捕り男の伝説」と「ハーメルンの子供の失踪伝説」とを初めて関係づけて記載している16世紀中葉の手書き本が、本書に紹介されている。この手書き本には以下のような…

阿部謹也 『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)2/3

新しい都市経済は男性労働者だけでなく、 その妻や子供にも容赦なかった。 p137−8 12、3世紀が厳しい時代だったのは村の伝統社会に対してだけではない。賃労働するしかない都市の下層民も同じだった。日雇い労働者の妻は、亭主が昼食に帰ってきたときに持っ…

阿部謹也 『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)1/3

中世と近代が、ある時期をもってはさみで切るように分けられるものでないことは、いまは常識になっている。日本では明治維新をもって、なるほど江戸時代の近世と明治以降の近代は区分されているが、西郷でも大久保でも勝海舟でも伊藤博文でも彼らの魂の半分…

ジュンパ・ラヒリ 『停電の夜に』(新潮社)

ごくありふれた日常のしぐさを(訳者あとがきにあるように)緻密な観察力を土台にした肌理の細かい文章で描いた、九篇からなる短編集。どの作にもたいした事件は何も起きないのに、話の運びの巧みさと登場人物のデリケートな会話は、それだけで魅力的である…

オルダス・ハクスリー 『すばらしい新世界』(光文社文庫)

およそ600年後の社会を描いたディストピア小説。初版は1932年という。ナチス運動がヨーロッパ全体に噂されはじめた時代だ。 600年後の未来社会とは次のようなものだ。 ・西暦ではなく、自動車のベルトコンベアー大量生産方式を確立し「初めて人民に幸福とい…

チェスタトン 『ブラウン神父の童心』(創元推理文庫)

1911年、いまから100年以上前に書かれた、いわゆる推理小説の草分け的な作品とされる。12篇の短編からなるが、そのいずれにも、ブラウンという風采が上がらないことおびただしいカトリック神父が登場する。チェスタトンはこのブラウン神父に謎解きをさせる…