アクセス数:アクセスカウンター

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

東 浩紀 『弱いつながり』(幻冬舎)

著者によれば「哲学とか批評とかに基本的に興味がない読者を想定した本です」ということ。その通り、「弱い絆の大切さ」が「飲み会で人生論でも聞くような気分でページをさくさくとめくれる」ように、やさしく書かれている。 p13−5 「いまあなたは、あなた…

内田 樹 『昭和のエートス』(文春文庫)2/2

なぜ私たちは労働するのか p131 新卒で入った会社を三年で辞め、「やりがい」を求めて、離職転職を繰り返す若者たちは、「クリエイティブ」で「自己決定・自己責任」の原則が貫徹していている会社、個人的努力の成果を誰ともシェアせず独占できる仕事、に就…

内田 樹 『昭和のエートス』(文春文庫)1/2

私的昭和人論 p19-21 敗戦のときすでに40歳を超えていた人々には、それ以下の世代にあった「敗戦によって自分がぽっきり折れる」ような断絶感はめったに見られない。知識人でいえば丸山真男や埴谷雄高や小林秀雄や加藤周一のような人である。敗戦は、それ…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)4/8

<何のために親は子を育てるか> 「親孝行」思想には、無償では子を育てる気になれない 親の気持ちが露骨にのぞいている p188-93 たとえばネズミなどの下等哺乳類の母性愛の生理学的基盤としては、脳下垂体から分泌されるプロラクチンという物質があって、…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)3/8

精神病とは何よりもまず、彼を取り巻く人々の共同幻想に同意できない病である P62−3 精神病者は、自分の私的幻想のほとんどを共同化できなかった者である。彼は、自分の住む社会の共同幻想をいったんは外面的に受け入れるかもしれないが、それは彼自身の詩的…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)2/8

<吉田松陰と日本近代> 奇矯、過激で小児退行的な吉田松陰に いまもエピゴーネンが生まれ続けている P37−43 わたしは集団心理は個人心理と同じ方法論で解明できるとの立場に立っている。・・・・集団というもの、とくに国家という集団は、その文化、思想、…

岸田 秀 『ものぐさ精神分析』(中公文庫)1/8

著者の名前は知っていたがときどき新聞に載る雑文しか知らなかった。それはそれで鋭いものだったが、なぜか本は一冊も読んだことはなかった。恥ずかしいことながらこの年になって久しぶりに昂奮して隅々まで読んだ。 歴史、性、時間と空間、言語、心理学、セ…

ディック・フランシス 『興奮』(ハヤカワ文庫)

作者ディック・フランシスはもともと騎手だったということだ。それも1953年から1954年のシーズンでイギリスの障害競馬においてリーディングジョッキーになったほどの有名騎手である。1953年から1957年にかけてはエリザベス王太后の専属騎手を務めたらしい。1…

辻原 登 『韃靼の馬』(日経新聞社)

近世中期の一八世紀初頭、徳川家宣、家継、吉宗の頃の歴史活劇小説。2012年の春にナントカ褒章を受けた辻原氏得意の分野だ。 側用人・新井白石が牛耳る江戸幕府と、家宣の将軍襲位を祝う朝鮮通信使のあいだで、国としての格の上下をめぐる名分論が戦わされる…