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2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ロベルト・カスパー 「リンゴはなぜ木の上になるか」(岩波書店)

俗説では、ニュートンは自宅のリンゴの木から熟したりんごが自然に落ちてくるのをみて、地球とリンゴの間には引っ張り合う力があることを直感したという。わたしたちは子供のときそう教えられ、高校の物理の時間で重力加速度というものを習い、宇宙にそんな…

内田 樹 「疲れすぎて眠れぬ夜のために」(角川文庫)2/2

「フェミニズム=奪還論」の意味 P59−60 ボーヴォワールが『第二の性』で主張しているのは、平たくいってしまうと、「男の持っているものを女性も持ちたい」ということです。権力と社会的地位と高い賃金。 ぼく・内田はこれをフェミニズム的「奪還論」と呼ん…

武道家の感傷?

これまで数冊の内田樹を読んだが、はじめて強い違和感を覚える一節に出会った。『昭和のエートス』(文春文庫)p100−109の『日本人の社会と心理を知るための古典二○冊』という、新聞か雑誌への寄稿である。私の気に障ったところだけを抜き書きする。 p103 …

内田 樹 「疲れすぎて眠れぬ夜のために」(角川文庫)1/2

みんな知っていることかもしれないが、内田樹は合気道の達人でもある。ウィキペディアには「(確固として保守的なバックグラウンドも併せ持つ)生活倫理と実感を大切にする、『正しい日本の(インテリ・リベラル)おじさん』」 と紹介されている。 この本は…

E.M.フォースター 「ロンゲスト・ジャーニー」(みすず書房)

登場人物全員が実生活の用にはまったく役立たない、男も女も半分狂ったような人間である。第一部を過ぎても、他人に見えた男二人が片親兄弟かもしれないと告げられただけで、できごとは何も起きない。E.M.フォースターはとても上手な文章と皮肉のよく効いた…

アンドレイ・クルコフ 「ペンギンの憂鬱」(新潮社)

売れない短編小説家ヴィクトルと、餌代に困った動物園から引き取ったペンギンのミーシャ、ミーシャと同じ名前の父親から無理やり預けられた四歳の少女ソーニャ、十七歳のベビーシッター・ニーナが寄り添う不思議な「擬似家族」が描かれる。 ヴィクトルは、短…

山本義隆 「磁力と重力の発見」2/7(みすず書房)

中世社会の転換 / 磁石の指向性の発見 p174 八〜十一世紀、イベリア半島やシチリアを支配下においていたイスラームはキリスト教に寛容だった。キリスト教の教会は信徒たちの指導者としての立場を保てたし、資産も保持できた。ムスリムへのキリスト教布教は…

山本義隆 「磁力と重力の発見」1/7(みすず書房)

あの山本義隆が今年七一歳になっているとは知らなかった。 物理学の鍵概念である「力の遠隔作用」が、ギリシャ以来どのように「発見」されてきたかを丁寧に説く浩瀚な書である。何であれ「発見」は、あるとき突然なされ、一直線で「真実」となるものではない…