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2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

池澤夏樹 『切符をなくして』(角川文庫)

よくできた童話であるといっていい。小学校高学年以上には読めるだろう。ネタバレになるからストーリー紹介はよすが、終わりのほうに死とは何かを子供に説明する面白い場面がある。 「人の心はね、小さな心の集まりからできているの。その小さな心をとりあえ…

村上春樹 『ラオスにいったい何があるというんですか?』(文芸春秋)

p169-70 p251 本書のタイトルの「ラオスにいったい何があるというんですか?」は、僕が「これからラオスに行く」と言ったときに、中継地のハノイで、あるヴェトナム人から僕に向かって発せられた言葉です。ヴェトナムにない、いったい何がラオスにあると…

池澤夏樹 『やがてヒトに与えられた時が満ちて…』(角川文庫)2/2

『やがてヒトに与えられた時が満ちて…』 出色の思弁的SFである。若い時から終末論に興味を惹かれてきたという池澤の、大学で専攻した物理学の知識が、彼本来の透きとおったロマンティシズムと論理的で平明な文章力の中に活かされている。表題はヒトという…

池澤夏樹 『やがてヒトに与えられた時が満ちて…』(角川文庫)1/2

短篇『星空とメランコリア』と中篇『やがてヒトに与えられた時が満ちて…』の2作を収録する。 『星空とメランコリア』は1977年に打ち上げられたボイジャー1号・2号と、ボイジャーが運んだCDを「読んだ」<知的生命体>に向けて書かれたメランコリック・サイ…