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2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

谷崎潤一郎 『蓼食ふ虫』(角川文庫)

男女関係のありように関する谷崎の特異な認識が書かれている。谷崎の後期作品はここから始まるというが、谷崎はもともと「蓼を食う」人だったのだろう。『痴人の愛』を38歳で書き、これは42歳のときの作。 主人公の二人・要と美佐子夫婦は結婚して10年ほど…

ミシェル・ウェルベック 『服従』(河出書房新社)

2022年のフランス大統領選挙でイスラム政権が誕生するという近未来の政治・文明論小説。第一回投票では極右・ファシストの国民戦線候補が一位、イスラム同胞党が二位になるのだが、決選投票で国民は<ファシストよりはイスラムの方がまだまし>と考えた結果…

ピエール・ルメートル 『死のドレスを花婿に』(文春文庫)

男女二人の主人公がいる。男の主人公フランツは深刻な双極性感情障害(いわゆる躁うつ病)を患っている。母親サラも過去同じ病気にかかっていた。彼女が幼いときに両親がナチの強制収容所に送られ、そこで死亡したことに重大な影響を被ったものだった。 フラ…

ピエール・ルメートル 『天国でまた会おう』上下(ハヤカワ文庫)

第一次大戦後、フランスで起きた(かもしれない)大規模な戦没兵士墓地をめぐるスキャンダルの話。2013年の新しい作品。 冒頭に、自分の立身しか頭にない貴族の中尉が登場する。自軍を無理やり前進させるために、「敵軍だ!」と嘘を叫びながら、敵の流れ…

ガルシア・マルケス 『エレンディラ』(岩波文庫)

ガルシア・マルケスは南米コロンビアのノーベル賞作家。下の三つの断片のように、およそ超常現象的なことを、こういうことが起きるのが南米の大地だとして、時に望遠レンズ風な、時に顕微鏡レンズ風な文体で、なにくわぬ顔をして描く。 ラテンアメリカの、北…