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2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

J・M・クッツェー 「恥辱」(早川書房)

場所は南アフリカ。よく女性にもてる、セックス依存症といってもいい五十二歳のオランダ系白人の大学教授が、ふとしたことから自分の講座の白人女子学生と寝てしまう。その女子学生は、はじめは彼のすることに対しておとなしかったのだが、彼が調子に乗って…

V.S.ラマチャンドラン 「脳の中の幽霊」(角川文庫)4/4

てんかん・天才・至高体験 p278 側頭葉、とくに左の側頭葉は宗教的な体験となんらかの関わりがあるのではないかと疑われている。医学生なら誰でも知っているが、この部位に原発するてんかん発作の患者は、発作のときに強い霊的体験をする場合があり、発作の…

V.S.ラマチャンドラン 「脳の中の幽霊」(角川文庫)3/4

鏡のむこう p205−6 鏡に映るペンを取ろうとして鏡面に手をぶつけてしまう鏡失認の患者たちは、鏡と向き合っただけで現実と幻想との境界領域に押しやられてしまう。鏡像が右側にあるのだから物体は左側にあるはずだという、きわめて単純な論理的推測ができな…

V.S.ラマチャンドラン 「脳の中の幽霊」(角川文庫)2/4

盲視 p127-32 眼球から入ったメッセージは視神経を通り、すぐ二つの経路に分かれる。この二つのシステムにははっきりした役割分担があるらしい。 一つは系統発生的に古い「定位」の経路で、もう一つはそれよりも新しく、一次視覚皮質と呼ばれる。この一次視…

V.S.ラマチャンドラン 「脳の中の幽霊」(角川文庫)1/4

ラマチャンドランの名前はときどき聞いていたが、この本に養老孟司が解説を書いているとあったので、読んでみた。オリヴァー・サックスが序文を書いていた。 V.S.ラマチャンドランはカリフォルニア大学サンディエゴ校・脳認知センターの教授である。幻肢の研…

バルガス・リョサ 「都会と犬ども」(新潮社)

岩波文庫で出ている同じ著者の『緑の家』といっしょで、一つのパラグラフの中に過去と現在が入り混じる。『緑の家』でははじめの100ページほど悩まされたが、今度は慣れた。登場人物が多く、主役が誰かがはっきりしないのも『緑の家』と同じである。著者の出…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)7/7

ニュートンと重力 p857 「私は力の物理的な原因や所在を考察しているわけではない。それらの力は物理的にではなく数学的にだけ考えられなければならない」というニュートンの言説は同時代のライプニッツにさえ理解されなかった。弁神論者ライプニッツは「神…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)6/7

フックとニュートン――機械論からの離反 p848 十六世紀後半には、音の強さやローソクの明るさは距離の二乗に反比例することが広く知られていた。ロバート・フックはニュートンへの書簡で「惑星の運動は接線方向への直線運動と中心物体(太陽)の方向に引き寄…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)5/7

デッラ・ポルタなどの「理論的」発見 p594 磁石の問題に関して(ダイヤやニンニクが磁力を破壊するといった)古代や中世の迷信と近代科学の分水線を跨いでいるのは、さまざまな実験結果を公刊し「魔術」を平明に種明かししたデッラ・ポルタの『自然魔術』で…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)4/7

十六世紀文化革命 p453−462 鉱山開発と冶金、鋳造などの大部な技術書『ピロテクニア』を一五四○年イタリア語で出版したビリングッチョと、同分野の技術書『メタリカ』を一五五六年イタリア語とドイツ語で出版したアグリコラは、それまでの時代にはなかった…

山本義隆 「磁力と重力の発見」(みすず書房)3/7

ニコラウス・クザーヌスの「思弁による地動説」 p312 一五世紀前半、ニコラウス・クザーヌスという枢機卿が宇宙の無限性を主張している。コペルニクスの地動説より百年も前のことである。 彼は、経験や観測事実から導かれたものではない<思弁による地動説>…