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2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 6

p216 大陸の政党の不幸は、一階級あるいは一集団の利害を国民全体あるいは全人類の利益とさえ一致すると証明しようとしたことだった。だから「ブルジョアジーの経済的膨張は歴史の進歩そのもの」であったり、プロレタリアートを人類の指導者と呼んだりした…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 5

p183 十九世紀の実証主義的進歩信仰はすべての人間は生まれながらに同等(同権でなく)であり、現実の差異は歴史的・社会的環境によるものにすぎないことを立証しようとした。環境と教育の改変と画一化によって人間を同等にすることは可能であるとした。 同…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 4

p146 帝国主義の支配形式に必要なものは、厳しい規律と高度の訓練と絶対的信頼性を具えた個人からなる有能な参謀本部である。この人々は虚栄や個人的や心から自由であるばかりでなく、業績に自分の名前が結び付けられることを願うことさえ放棄する覚悟がな…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 3

p89 イギリスにおいては、古い名門貴族と市民階級の中間にあったジェントリーがブルジョワジーの上層部をたえず同化し貴族化させていた。その結果、イギリス階級社会のきわめて硬直的な性格にもかかわらず、この国では貴族への上昇の可能性が開けていた。こ…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 2

p51 永久的膨張という帝国主義のありようは資本主義的生産自体の運動過程そのものであり、一時的な対外政策の冒険ではないとされた。(この言説は戦後日本の「平和主義者」が暴こうとしたような嘘の塊りではない。帝国主義が征服欲という政治的理念だけから…

ハナ・アーレント 「全体主義の起源」第二巻「帝国主義」 1

p5 労働運動は資本主義が展開する世界政策を深く理解できない。労働運動は本質的に国内政治に利害を持ち、闘争においては一国の枠内から抜けることができないから、労働者インターナショナルには基本的な矛盾がある。同品質のものが海外に低価格で存在する…

小林秀雄 「モオツァルト」

新潮社版全集8 p78 どうして、モオツァルトのすることがすべてモオツァルトらしい形式や手法に従い、他人の手法に従わないかということは、モオツァルトの鼻がどうしてこんなに大きく前に曲がって突き出しているか、そしてそれがまさしくモオツァルト風で他…

小林秀雄 「當麻」「西行」「実朝」

新潮社版全集8 [當麻]p15 「仮面を脱げ、素面を見よ」、そんなことばかり喚きながら、どこに行くのかも知らず、近代文明は駆け出したらしい。ルソーはあの「懺悔録」で、何ひとつ懺悔などしたわけではなかった。あの本にばら撒かれている、当人も読者も気が…

小林秀雄 「蘇我馬子の墓」

飛鳥や天平の寺々が堂々たる石造建築だったとしたら、その廃墟は、修理に修理を重ねて保存された法隆寺という一かけらの標本よりは素晴らしいだろう。わが国の滅びやすい優しい芸術は、まず滅びやすく優しく作られた建築という基本芸術の子供である。 堅く、…

川上未映子 「ヘヴン」

電車の乗客たちに見る、バラバラのひとたちの、よく切れない刃物のような集合が一つの箱に乗っている、それが同じターミナルに運ばれていくという不愉快な事態、そんなものが非常に分かりやすく書かれている。1Q84とならんで二○一○年の秀作に多くの人があ…

池田清彦 「遺伝子がわかる」 「遺伝子『不平等』社会」

「遺伝子がわかる」 p154「獲得形質は遺伝するか」という問題 生物は環境に変化が起きると、これを上手に利用して、すばやく進化をすることができるらしい。・・・・・DNAメチル化はDNAそのものを変化させずにDNAの発現を制御するメカニズムであるが、もし…

井筒俊彦 「イスラーム思想史」 4

無気力な大衆の教化をあきらめ、同時に、不徹底な聖典解釈によって大衆をまどわす神学者を傲然と見下すアヴェロイス。12世紀の彼にできなかったのは多分、井筒俊彦氏が行なった次のようなことだけだった。 現代の物理学・分子生物学・人類学・心理学等を動員…