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2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

井筒俊彦 「イスラーム思想史」 3

十二〜三世紀、新プラトン派とは別に、西欧キリスト教哲学に深甚な影響を及ぼした第一級のイスラーム思想家に、当時イスラムの支配下にあったスペイン・コルドバのアヴェロイス(=イブン・ルシド)がいる。彼の手になるアリストテレス注釈のほとんどは、発…

井筒俊彦 「イスラーム思想史」 2

p221−4 九世紀から約二百年をかけてイスラーム思想に移されたアリストテレス哲学の体系には徹底した新プラトン的解釈がなされた。それは翻訳者の中心がネストリア派シリア人たちであるという、いわば地政学上の必然によったものだったが、彼らの翻訳事業は…

井筒俊彦 「イスラーム思想史」 1

P14−24 アラビア人は、どんな微細なものにも、一々特色のある名をつける。例えばサンスクリットに典型的に見られるような、共通の要素を基とし、それに他の要素をいろいろ組み合わせて新しい語を作る、いわゆる合成語は、個物を絶対的に尊ぶアラビア人の精神…

福岡伸一 「世界は分けてもわからない」 2

p145 脳死を人の死とするロジックから敷衍すれば、受精後25、6週の脳波が現れる時期を「脳始」とし、それ以前の胚はヒトではないとして、再生医療などの名目でいくらでも利用しようとする日が来るだろう。 それは器官発生の高解像度画像を手にした私たちが…

福岡伸一 「世界は分けてもわからない」 1

p32 (六等星以下の)かそけき星の光は、理論上は三十秒以上凝視してカメラのように露光しないと見えない。しかし目はほぼ瞬時に星が見える。 光には波と粒子の二つの性質がある。波として考えればエネルギーを一定量受け取るのに三十秒以上かかるが、粒子…

井筒俊彦 「イスラーム生誕」

p120付近 「イスラーム」とはアラビアでは長い歴史を持つ言葉であって、ムハンマドが初めて使い出した言葉ではない。元来の意味は、人が自分の大切な所有物を他人に渡してその自由処理に任せるということだった。それをムハンマドが宗教的次元に移して使った…

ジョン・ダワー 「敗北を抱きしめて」

上巻p230 第二次大戦中、戦時動員の労働者を国策に協力させるために全力を挙げていた『協力新聞』は、戦後になると「どんな経験でもこの世に無意味なことなどありえない」として、敗戦に対する保守派の反応を典型的に告げていた。 「日本、アメリカ、世界人…

井筒俊彦 「意味の深みへ」

p77−8 人間の経験は、いかなるものであれ、言語的行為であろうと、非言語的行為であろうと、すなわち、自分が発した言葉、耳で聞いた他人の言葉、身体的動作、心の動き、などの別なく、必ず意識の深みに影を落として消えていく。たとえ、それ自体としては、…