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高村 薫

高村 薫 『神の火』  新潮文庫

若狭湾の原発に対して「北」からのテロ攻撃が計画されているという話。 かつて原発技術者だった主人公・島田が、CIA、北朝鮮、KGBそして我が国の原子力規制機構などの激しい諜報戦に巻き込まれる。 話の基本は面白いのだが、上巻を読んだ限りではメインスト…

高村 薫 『地を這う虫』(文春文庫)

文庫版で50ページほどの小編を集めた短編集。地を這う虫とは、刑事を自分で退職しながら現在も昔とよく似た仕事をしている男のことである。 刑事とよく似た仕事とは、第1篇『愁訴の花』では警備会社の社員研修担当者、第2編『巡り逢う人びと』ではサラ金会社…

高村 薫 『太陽を曳く馬』 (新潮社)

オウムも含めて仏教の広大な宇宙観と人間論を真正面から扱った哲学小説。日本でこんな小説は一度も書かれなかったのではないか。何冊か井筒俊彦を読んでいたおかげで、下巻66頁「言語以前の、意味以前の、絶対無分節から、私たちのふだん生きている名称のあ…

高村 薫 『レディ・ジョーカー』(新潮文庫)

グリコ森永事件がこの小説のきっかけになったらしい。 日本一の日の出ビールの社長が誘拐される。現金20億を支払うという条件で解放されるが、金を手に入れた犯人グループはそれを外部には発表せず、仲間のアジトに隠匿する。会社が支払ったことは事実なの…

高村 薫 『新リア王』(新潮社)

高村薫のリア王は、過去40年自民党代議士として君臨してきた政治的人間・福澤栄。地吹雪が道行く人の視界を全く狂わせてしまう青森の地で、絶対の権勢を誇ってきた男だ。毒蜘蛛の殺し合いのような、昨日別れたはずの女と今日再びまた違った形で寝るような…