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2022-02-17から1日間の記事一覧

宮部みゆき 『ソロモンの偽証』(新潮文庫)

なんとトルストイ『戦争と平和』よりも長い学園内法廷ドラマ。6巻もあるが、『戦争と平和』よりも格段に読ませる。『モンテ・クリスト伯』のような勧善懲悪的予定調和のばかばかしさもない。 ある中学校でクリスマスの朝、一人の2年生の無残な校舎屋上から…

宮部みゆき 『我らが隣人の犯罪』(文春文庫)

短編集。表題作は『オール読物』推理小説新人賞受賞作。 父親以外の男性から精子を提供されて生まれた少年が物語を支えている。タウンハウスの隣家に、散歩に行けないストレスでわめきまくるチンを飼い、脱税をしまくっている夫婦がいるのだが、少年とその叔…

高村 薫 『地を這う虫』(文春文庫)

文庫版で50ページほどの小編を集めた短編集。地を這う虫とは、刑事を自分で退職しながら現在も昔とよく似た仕事をしている男のことである。 刑事とよく似た仕事とは、第1篇『愁訴の花』では警備会社の社員研修担当者、第2編『巡り逢う人びと』ではサラ金会社…

高村 薫 『太陽を曳く馬』 (新潮社)

オウムも含めて仏教の広大な宇宙観と人間論を真正面から扱った哲学小説。日本でこんな小説は一度も書かれなかったのではないか。何冊か井筒俊彦を読んでいたおかげで、下巻66頁「言語以前の、意味以前の、絶対無分節から、私たちのふだん生きている名称のあ…