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2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

花田清輝 『鳥獣戯話』(講談社)1/2

ちょっと考えれば誰でもそうだと気づくのだが、「歴史」は西洋でも東洋でも、ある王朝の編纂になる「正史」を中心にした既成神話の集積したものである。中華帝国の正史はすべて前代を滅ぼした後の帝国が自分たちの側から書いたものだし、そのことは支配人民…

ハラルト・シュテンプケ 『鼻行類(新しく発見された哺乳類の構造と生活)』(平凡社ライブラリー)

ある人の推薦読書目録でこの本を知ったのだが、なんといっても「鼻行類」という漢字三文字が目を引いた。「鼻」と「行」は普通並んでは使わない文字だからだ。副題に<新しく発見された哺乳類の構造と生活>とあるが、いったいこれは何の本だろうと思った。 …

スティーブン・キング 『シャイニング』(文春文庫)

ロッキー山中にある「オーバールック」(絶景荘)という超豪奢ホテルを舞台にした、いわゆる幽霊屋敷ホラー小説。読み始めて、だいぶ前にケーブルテレビでやっていた映画の原作であることに気付いたが、こういうものは映像よりも原作のほうが格段に楽しめる…

イザベラ・バード 『イザベラ・バードの日本紀行』下巻(講談社学術文庫)3/3

p102−9 変えようのないアイヌの生活 アイヌの生活は臆病で、単調で、ものがなく、退屈で、希望がなくまったく神のいない生活です。とはいっても、他の多くの先住民のそれよりはかなりましなものではあります。それにいまさら言うまでもなく、わたしたちの国…

イザベラ・バード 『イザベラ・バードの日本紀行』下巻(講談社学術文庫)2/3

p90 売買や商業にはおよそ向いていないアイヌ アイヌは客人にはさかんに与えようとするものの、こちらが何か買いたいと申し出ると、自分たちのものを手放したくないと言います。彼らが実際に使っているもの、たとえば煙草入れときせる、柄とさやに彫刻を施…

イザベラ・バード 『イザベラ・バードの日本紀行』下巻(講談社学術文庫)1/3

下巻の読みどころは当時のアイヌの記録。著者が北海道の平取(びらとり・苫小牧の東約30km)地区で実際に体験、見聞したものである。明治初期のアイヌの実生活の様子が、日本政府の意向をまったく気にしないイギリス上流女性の目線で遠慮なく描かれている…

イザベラ・バード 『イザベラ・バードの日本紀行』上巻(講談社学術文庫)2/2

p425−8 秋田・大館にて 誠実さと礼儀正しさ わたしは、日本の宿屋の経営者は、外国人に対しては日本人よりも高い料金をとってもいいと思います。なぜなら日本人なら六人から八人が喜んで泊まる一室を外国人は一人で占領し、室内で水を使えるようにしろとか…

イザベラ・バード 『イザベラ・バードの日本紀行』上巻(講談社学術文庫)1/2

イギリス北部、スコットランドに近いヨークシャーの上流夫人が、明治10年頃の日本、それも江戸時代の匂いが濃厚に残る東日本の農山漁村を、たった一人の忠実な男性通訳兼従僕とともに踏破した旅行記である。イザベラ・バードはウィキペディアによれば、当時…

スティーヴン・グールド 『ダーウィン以来』(ハヤカワ文庫NF)3/3

p167・172‐3 第12章 「前適応」の問題――化石では未発達に見える器官には、太古、別の器官としての役目があった 自然淘汰はダーウィン理論の核心である。それは、高度な適応構造の単なる一部分としての意味しか持っていないように見える諸要素を、次々と寄せ…