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2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

カズオ・イシグロ 「わたしを離さないで」(ハヤカワepi文庫)

(公式の世界では存在しないことになっている、研究さえ禁止されている)クローン人間の悲惨な運命と、彼らを作った私たちの宿業の深さを、きわめて抑制の効いた文体の中で描いた秀作である。 時代設定は一九九○年代のイギリス。ちょうどクローン羊「ドリー…

池谷祐二 「単純な脳、複雑な私」(朝日出版社)2/2

僕らにとって「正しい」という感覚を生み出すのは、「どれだけその世界に長くいたか」というだけにすぎない p112 僕らはいつも、妙なクセを持った目でこの世界を眺めて、その歪められた世界に長く住んできたから、もはや今となってはこれが当たり前の世界で…

池谷祐二 「単純な脳、複雑な私」(朝日出版社)1/2

私たちの脳細胞は、つね日頃たいした仕事をしているわけではない。脳細胞一つ一つの仕事は料理旅館の庭にある鹿威し(ししおどし)のようなもので、水源から水が入ってきて竹の筒が一杯になると重力の作用で筒が傾き、筒の下の石鉢などに一挙に放水する・・…

マックス・ウェーバー 「古代ユダヤ教」(岩波文庫・下)5/5

パリサイびとの教条主義への反発からキリスト教が生まれた p916 当時、もっとも厳重なレビ的清潔・敬虔を誓うパリサイびとと、ごく普通の不浄な生活をしているユダヤ人のあいだに激しい憎悪が生じていた。ナザレのイエスが、他の人たちとの食事、交際、結婚…

マックス・ウェーバー 「古代ユダヤ教」(岩波文庫・下)4/5

パーリア状況を「栄光」化させることでユダヤ教は完成した p826 バビロンに移送されたユダヤ人は、バビロニアやペルシアの貴族の地代徴収者、使用人となるものがかなりの数にのぼった。また、商業とくに貨幣の両替業に従事していたものも多い。これは、まさ…

マックス・ウェーバー 「古代ユダヤ教」(岩波文庫・下)3/5

ユダヤの終末待望論は、現世の霊的問題に対する徹底的な無関心を生んだ p752-4 インドでは、現世の意味いかんを問う問題、すなわち苦悩と罪責を負わされた破れやすい人生の無常や、その矛盾葛藤を正しく弁明すべき根拠は何であるかという問題は、あらゆる宗…

マックス・ウェーバー 「古代ユダヤ教」(岩波文庫・下)2/5

イスラエルの神ヤァウェが興味を持ったのは、戦争という無慈悲な世界だけだった p694 イスラエルでのような、預言する恍惚師による自由なデマゴギーというものは、他のどこにも伝承されていない。ローマのような官僚主義帝国ではただちに宗教的警察権力が介…

マックス・ウェーバー 「古代ユダヤ教」(岩波文庫・下)1/5

都市のパトロンに支えられ、生活に困窮していなかった旧約の預言者たち p653-5 預言者が語るのは、そのほとんどが国家と民族の運命である。しかも必ず、権力をにぎる者たちに対する感情の激した攻撃の形をとる。ここに「デマゴーグ」が、歴史上確認しうるか…

大嶋幸範 小谷野敦『日本人のための世界史入門』余談

イスラム圏で科学技術が発達しなかった理由 本ブログ4月25日付 「小谷野敦『日本人のための世界史入門』1/2」 について、jun-jun1965という読者の方から質問をいただいた。<なぜイスラム圏では科学技術が発達しなかったのでしょう?>という難しい質問であ…