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2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

内田 樹 「ためらいの倫理学」3(角川文庫)

「矛盾」と書けない大学生 p265-71 三年ほど前、学生のレポートに「精心」という字を見出したときには強い衝撃を受けた。 だが、この文字はまだ「精神」という語の誤字であることが直ちにわかる程度の誤記だった。しかし去年、学生が「無純」と書いてきたと…

内田 樹 「ためらいの倫理学」2(角川文庫)

アンチ・フェミニズム宣言 p143 私は若い頃、素直な心がまだ残っていたので、上野千鶴子やジュリア・クリステヴァの本を少し読んだ。 フェミニストたちは「現代社会において、男性は権力を独占し、女性はその圧制のもとに呻吟している」と書いており、「男性…

内田 樹 「ためらいの倫理学」1(角川文庫)

古だぬきは戦争について語らない p22-4 一九九九年、朝日新聞にアメリカ人作家スーザン・ソンタグと大江健三郎の『未来に向けて』という往復書簡が載った。そのなかでスーザン・ソンタグは戦争に対する進歩派アメリカ知識人の典型的な文章を書いた。 「作家…

司馬遼太郎 「微光の中の宇宙(私の美術観)」(中公文庫)4

須田国太郎 p164 わが国の地理環境は色彩感覚の上で特殊といっていい。空気が素直に太陽の光を透さず、多くの場合、水蒸気が気色の色彩の決定に重要な要因をなしている。ヨーロッパなどの乾燥した地理的環境の国々とはまったく異なるのだ。 須田国太郎の『…

司馬遼太郎 「微光の中の宇宙(私の美術観)」(中公文庫)3

ゴッホ p129 ゴッホは精神病学の研究対象になったし、確かに精神病学はゴッホだけでなく、多くの天才の言動を追跡することによって、天才と狂気の類縁性を見いだしていた。天才にしばしば見られる精神病的傾向の指摘は、なかば常識化されているともいえる。…

木暮太一 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」(星海社新書)

日本経済がデフレの蟻地獄に落ち込み、ユニクロでズボンが一○○○円、牛丼チェーンで昼ご飯が二五○円になっている一方で、サラリーマンの給料がずぶずぶと下がり続けている。 この本は日本の“一般的”な働く人の、「世界の中で十分豊かな日本といわれているのに…

司馬遼太郎 「微光の中の宇宙(私の美術観)」(中公文庫)2

空海 p75 われわれは、京都の教王護国寺(東寺)の仏たちを、ただの彫刻と見てさえ、その造形の異様さに、人間の空想力というものはこれほどまで及ぶのかと呆然とする。しかもそれが単に放恣な空想力だけでつくられたものでなく、その内面に緻密な思想があ…

司馬遼太郎 「微光の中の宇宙(私の美術観)」(中公文庫)1

p21 戦前から戦後にかけて、大阪などの油絵の塾は、学校とか塾とかは称せず「洋画研究所」という看板をあげるのがふつうだった。最初そういう看板を見たとき、なにか誇大表示に似た感じを受けた。絵具会社での化学としての研究所ならともかく、油絵の画塾が…

新聞から 森達也 「正義を掲げ追い込んだ先に」

7月26日の朝日新聞「論壇」に、森達也氏の「正義を掲げ追い込んだ先に」という質の高い大きなコラムが載っていた。 大津市のいじめ自殺問題について、3人の「加害」中学生とその家族・親類の名前、顔写真、住所などがネット上に悪意を持ってばら撒かれて…