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2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

谷崎潤一郎 『春琴抄』(講談社全集)

「谷崎潤一郎が美しいと考えるもの」が前面に出た中編。47歳のときの作。「女性がもつ、この世界で他と比較できない美しさ」の前には、その女性の人となりの高慢とか残酷とかはどうでもいいことである、男と生まれたからには美しく気品ある女性には必ず跪…

大嶋幸範  国民の象徴の憲法違反行為

去年夏、天皇がなるべく早く退位したい旨をテレビで表明された。大震災に遭った避難家族を膝を折って慰める天皇の姿に感動していた国民は、ほとんどが賛意を示した。それを受けて退位を根拠づける特別法も近々成立するようで、退位後の称号や住まいまで既定…

大嶋幸範 『原発賠償費用を電気代にこっそり上乗せ』(朝日新聞投稿原稿)

2月27日付本紙一面に「福島原発の賠償費 1世帯年587〜1484円を電気代に上乗せ 負担額は検針票には示されておらず、利用者の目には届かない」とあった。 被害者に対する賠償の必要は理解できる。国や東電が巨額賠償に対する資金を短期的には用意できず、一般…

谷崎潤一郎 『盲目物語』(講談社現代文学全集)

46歳のときの作。信長の妹、浅井長政の妻、淀君の母であるお市の方。その美貌の人の悲しい生涯を、按摩として彼女に長く仕えた弥市という座頭が、後年なじみの肩もみ客相手に語った体裁になっている。弥市は三味音曲の心得もあって長政にもお市にも贔屓にさ…

森鴎外 『大塩平八郎』(昭和出版社 鴎外作品集第5巻)

天保8年(1837年)、大坂町奉行所の与力・大塩平八郎は、米の値段が騰貴し、貧民が難渋しているときに乱を起こした。この暴動の原因はただ一つ、飢饉である。 天保3年(1832年)頃から天候が長期的に不順になり、ひどい不作が続いた。天保7年の作…

森鴎外 『阿部一族・堺事件など』(昭和出版社 鴎外作品集第4巻)

この巻には、ほかにいくつかの短編が入っている。その一つ『羽鳥千尋』では、羽鳥という青年に私淑され、書生として居候させてくれと頼まれる(鴎外自身らしい)「私」の、小学校以来の大秀才ぶりが詳しく書かれている(p63-4にかけて)。鴎外のことだから…

森鴎外 『青年』(昭和出版社 鴎外作品集第3巻)

日本が近代化して半世紀、新しい文学を新しい頭脳で開こうとする若者の芸術論と、時代などでは変わらない恋ごころが、どちらも正面から扱われる。鴎外48歳、1910年の刊行。漱石の『三四郎』(1908年、42歳)に大いに触発されて書いたものらしい…

ミシェル・ウェルベック 『地図と領土』(ちくま文庫)

ちまちました日本の作家には書けない、神を相手にしたことのある民族の子孫にしか書けない大傑作。 地図とは世界を今あるように作った「第一原因」の意図のままにあるところのものだが、領土とは、その「地図=無機質」世界を、意識によって分節・説明するこ…