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梅棹忠夫 女と文明ー妻不要論

 本書のある章を読んでいて一つ気になった論議があった。妻というものはやがて不要になるという激しい内容である。

 p89-90

 一般的な男の立場から言えば、今まで妻というものは家事労働全般の担当者として、その必要不可欠性が認められてきた。しかし今は高機能の掃除機、洗濯機、冷蔵庫、電子オーブンレンジなどの家電製品と、衣料と室内のクリーニング屋、料理配達屋などの専門業者が、妻が独占してきた家事労働の多くの部分に進出して来ている。つまり妻というものの存在意義を危うくしている。そして未婚の男はかなりの割合でこのことに気づき始めている。

 その結果、35~40歳を超え、かなりの収入もあるのに、いっこう結婚しようともしない男が増えている。現実の問題として、毎月5~10万円の費用契約で洗濯、室内清掃、夕食の配達などをやってくれ、平均以上の文化生活が可能になっているらしい。

 つまり単身男の収入が平均より少し良ければ、妻は不必要になるのだ。これくらいの費用負担で、毎日愚痴を聞かされ、実家の内情、近所のうわさあれこれにつき合わされる面倒が、一切なくなるのだ。男女の間に特別な恋愛関係がないかぎり、若い男の結婚率は確実に下がっていくだろう。そして日本の人口減少に歯止めがかかることはないだろう。